白髪=加齢の象徴は古い! 自分を受け入れた自信と魅力に満ちた、パリの“グレイヘア”のマダムたちから学んだこと

暮らし

公開日:2016/9/16


『パリマダム グレイヘア スタイル』(主婦の友社)

 普段、どんなに「歳を重ねることは恥ずかしいことではない」と思っていても、ありのままの自分を受け入れることは時に難しい。年齢とともに目立ってくる白髪やシミ、シワ、落ちにくくなった体重を受け入れられず、必死であがいてしまう。自然体でいることに憧れながらも、老けることを恐れている。そう、若さを美徳とする価値観は確実に、刻み込まれているのだ。

 グレイヘア(白髪)の女性たちが並んだ『パリマダム グレイヘア スタイル』(主婦の友社)を開いた瞬間、そんな価値観が自分のなかにあることに気づいてしまった。それは登場している白髪頭の女性たちが、あまりに美しくイキイキとしていたから。私のなかで白髪は老いの象徴であり、恥ずかしながら「白髪染めをしない=人生を積極的に楽しむことを諦めた人」という思い込みがあったことに気づかされ、ショックを受けた。

 39歳から82歳まで、さまざまな理由からグレイヘアで生きることを選んだパリの女性たちは、たまらなく美しい。年齢は添えてあるものの、幸せそうに伸びやかに笑う彼女たちを見ても「この人、いくつなんだろう」という好奇心は湧き出てこない。ただただ、幸福感に満ちた笑顔に圧倒されてしまう。

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 グレイヘアを選んだ理由はさまざまだ。遺伝的に白髪になりやすかったり、昔から白髪に憧れていたり、白髪染めに通うのが億劫になったり、病気や怪我によるものだったり、ケミカルな白髪染めを拒否していたり、美容師から薦められたり……。全員がポジティブな理由からではないものの、白髪である今の自分を受け入れた彼女たちは、白髪という個性を引き立たせるために、積極的にファッションやヘアメイクを楽しんでいる!


 読み進めていくと、美しい笑顔からあふれる自信と幸福感の鍵は、どうやら“現在の自分を受け入れること”にあることに気づいた。
いくつかの素晴らしい言葉がある。ギャラリーのオーナーを務めるカトリーヌは、白髪を受け入れたことによる変化をこう語る。

「過去には、白髪という言葉は“老いた人”というキーワードを連想させたかもしれない。私は髪を染めることからの自由を勝ち取り、自分らしくナチュラルでいることで、老いを受け入れていく……その過程がとても大切だと思う。そうすることによって、髪、肌、雰囲気すべてがナチュラルにマッチして、よりいっそう自分らしく美しくなるのではないかしら」


 また、かつてモデル経験もあるミッキーは「グレイヘアを気にするか、なんてナンセンス。(中略)『ナチュラルで、一番私らしい!』と言える喜びは、なにものにも代えがたいものよ」と語り、デザイナーのボニーは「染めようと思う心が、逆に人を老けさせるのよ。髪を染めて別人になる必要はないわ。そのままの自分でいたい」と言う。モードが大好きなアンヌは「白髪は私のオリジナリティね」と語り、若いころからグレイヘアを楽しんできた。


 登場するのはデザイナーやアーティストなど、美意識の高い女性たちではあるが、決して難しいテクニックを駆使したオシャレではない。白い髪に合う色を求め、青い服ばかりを選ぶ人もいれば、赤い口紅で白を引き立たせる人もいる。白髪だからこそ、美しいツヤをキープすべく、ヘアケアにも余念がない。また、いくつになっても仕事に趣味に充実した日々を送り、ボニーは80代を目前にしてもなお、常に恋を楽しんでいる!

 歳を取ると内面の充実度が顔に出るものだと聞かされてきたが、本書を開くとそれが真実であることがわかる。確かに彼女たちには、年相応のシワが刻まれているが、だからなんだというのだろう? 輝くような笑顔で、グレイヘアによく似合う服を身にまとい、TPOに合わせたヘアメイクをほどこし、イキイキと人生を語る彼女たちから受ける印象は“美しい女性”ということだけだ。今の自分を受け入れた自信からくる大らかな魅力にあふれ、おばあさんとか、老女とか、そんな言葉はひとつも似合わない。



 ここで登場する「グレイヘア」は、ひとつの例なのだと思う。彼女たちにとっては白髪だったが、人によっては体型かもしれないし、境遇かもしれないし、どうしても手に入れられなかった何かかもしれない。今の自分が持っているものを受け入れ、それも自分を形作る個性のひとつと考える。そんなとき人は、彼女たちのような輝く笑顔と、真の意味での若々しさ、つまり常に人生を積極的に楽しむ姿勢を得られるのかもしれない。

 いつか私もあんなふうに笑える女性になれるだろうか? そのためには何を考え、何を乗り越え、これから何を受け入れていくのだろう? そんなことに思いを馳せながら、歳を取ることが楽しみになってくる……そんな素晴らしい読書体験となった。

文=富永明子