親友に妻を”寝取らせた”谷崎潤一郎、“女遊び”に狂った石川啄木…『文豪ストレイドッグス』もビックリな文豪の“ゲス”エピソード

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/13

『「文豪」がよくわかる本』(福田和也:監修/宝島社)

今年4月からアニメ化された人気漫画『文豪ストレイドッグス』(春河35:画、朝霧カフカ:原作/KADOKAWA)。太宰治が探偵だったり、芥川龍之介がマフィアだったり、そのぶっ飛んだ設定が大ウケしているが、あくまでフィクション(当たり前か…)。それでは実際の文豪たちの素顔とはどのようなものか。『「文豪」がよくわかる本』(福田和也:監修/宝島社)を読むと、「おっと…さらにぶっ飛んでいるではないか…」と唖然とする。

石川啄木

「はたらけど はたらけど 猶わが生活(くらし) 楽にならざり ぢつと手を見る」

清貧なイメージの啄木だが、その実、金銭トラブルの多い曲者であったという。金欠に悩むと、終生の友人・金田一京助は自らの家財を質に入れてまで啄木を援助したが、その借金の主な原因が“女遊び”。芸者に現を抜かすも、その芸者を他の男にお金で売ったとか…。

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「たはむれに 母を背負ひて そのあまり 軽きに泣きて 三歩あゆまず」

涙なしには読めない名歌であるが、啄木の妹の回想によると、「夜中に寝ている母を起こして、饅頭を作らせたものの、出来上がると、もういらないと投げつけた」「母に迷惑ばかりかけていた兄が母をおんぶするなどありえない」とのこと。

そんな啄木の本性(?)を表した短歌がコチラ。

「一度でも 我に頭を下げさせし 人みな死ねと いのりでしこと」

清々しいほどにゲスい文豪である。

岡本かの子

画家・岡本太郎の実母である、岡本かの子の小悪魔(を通り越して魔女)っぷりもすごい。若い学生・堀切を愛人にし、あろうことか、夫妻と息子、愛人の3人で、奇妙な同居生活を始めた。堀切が亡くなったあと、仏教に救いを求めるも、さらなる愛人・新田と恋に落ち、またもや自宅に招き入れ、家族と奇妙な同居生活を始める。夫・一平が新聞社の特派員になると、その渡欧に同行したが、なんと新田も一緒に旅をしたという。

一平はなぜ、そのような同居生活を受け入れたのか。岡本太郎の芸術が爆発したゆえん もその辺りにあるのか。謎が多すぎて頭がくらくらする文豪だ。

島崎藤村

『破戒』『夜明け前』など、自然主義文学の先駆者として知られる藤村。妻を亡くし、幼い息子たちと共に残された藤村は、次兄・広助の次女で、文学を愛好していたこま子を家事手伝いに迎える。ところが姪っ子であるこま子と愛人関係となり、こま子が妊娠。許されぬ事態から逃れるため、藤村はフランスへ逃亡…。

パリで3年を過ごして帰国した藤村は、この恋愛沙汰を題材に『新生』を発表してこま子との関係の清算を図る。しかし世間の非難を浴び、激怒した次兄とも絶縁…。自業自得とはまさにこのことだ。

他にも、「親友に妻を寝取らせた谷崎潤一郎」「禁欲の裏で春画収集に精を出していた宮沢賢治」など、本書には文豪の“ゲス”エピソードが惜しみなく盛り込まれている。多少の幻滅は禁じ得ないが、人間らしい彼らの素顔を知れば、より一層、作品に味わいを感じられるというものだ。作品紹介も充実しているので、これを機に文豪の世界に足を踏み入れてみてはいかがだろう。

文=尾崎ムギ子