原爆の壊滅的な被害から復興を目指して作られた広島カープ! “強さ”以上に変わったこと、”カープ出身の選手たち”の貢献力とは?

スポーツ

公開日:2016/9/22


『すごい!広島カープ』(赤坂英一/PHP研究所)

 瞬間最高視聴率は70%を超え、商店街で道行く人が互いにハイタッチをし、破格の優勝セールを行われるなどお祭り騒ぎが話題になっている。

 首位を独走し、逆転勝利を重ね、圧倒的な強さで優勝を決めた広島カープだが、開幕前は多くのプロ野球評論家たちからBクラスと予想されていた。そんな中、カープ優勝を予想していたカープOBの評論家がいたという。その根拠はと言えば、1950年に創立された広島カープが初優勝を果たしたのが1975年。最後に優勝した1991年から25年目という2016年はそろそろ優勝するというのが、カープの伝統だというのである。

 『すごい!広島カープ』(赤坂英一/PHP研究所)は、そんな広島カープにまつわる球団創設から現在に至るまでの歴史と変遷を現役、OB合わせて10名以上のカープ選手への取材をもとにまとめられた一冊だ。

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 広島で生まれ育った生粋のオールドファンであり、『日刊ゲンダイ』の野球記者としてプロ野球を追い続けてきた著者は、カープは強くなったが、それ以上に変わったということを本書の中で述べている。

 広島カープは戦後まもなく原爆による壊滅的な被害からの復興を目指して作られた市民球団から始まったという歴史を持つ球団だ。かつてはスポ根漫画を地でいくような「胃から汗がでる」と表現される猛特訓と任侠映画のような広島弁の怒号が飛び交う、キツイ、厳しい、怖いというイメージの強いチームだったというが、最近は「カープ女子」という言葉が流行語にもなったほど、女性にも人気が高く、アウェーの球場でもスタンドが真っ赤に染まるほどカープ人気は高まりを見せている。

 その人気の秘密は、他球団のように資金力で一流選手を獲得することはできないが、カープ出身の選手たちが引退後も多く球団の運営に携わり、有望な若い選手を見つけ出して、大切に育ててチームを強くしてきたという発掘と育成というスタイルのようだ。

 本書には2016年のリーグ優勝を語るうえで欠かせない黒田博樹投手、新井貴浩選手の入団秘話やカープ復帰、大記録達成の裏のエピソード、カープを初優勝に導いた古葉竹識元監督や初優勝時に主砲として活躍し、前回優勝の1991年に監督を務めた山本浩二元監督が語る練習や采配などを掘り下げたマニアックかつ濃厚なカープ情報が満載だ。

 特に、巨額の年俸を蹴ってメジャーリーグからカープに復帰した黒田投手のエピソードでは野球人生の最後は自分を育ててくれたチームや応援してくれたファンのために投げたいという想いが語られており、その男気と気迫に25年ぶりの優勝は奇跡でも、マグレでもないことを改めて感じさせられる。

 本書を読めば広島カープというチームや選手のことが身近に感じられ、これからのカープ戦がさらに楽しめること間違いなしだ。

文=鋼 みね