2035年には東京の高齢世帯の44%がひとり暮らしに! 他人に迷惑をかけずに安心して一生を終えるための「ひとり終活」

社会

公開日:2016/9/28

『ひとり終活 不安が消える万全の備え』(小谷みどり/小学館)

 『ひとり終活 不安が消える万全の備え』(小谷みどり/小学館)によると、2035年には東京の高齢世帯の44%がひとり暮らしになるそうだ。また、内閣府の発表によると、全国の65歳以上のひとり暮らしの高齢者のうち76.3%は「今のままひとり暮らしでよい」と考えているらしい。

 さらに、本書によると、50歳の時点で一度も結婚をしたことがない男女の割合は、2010年時点で男性が約20%、女性が約10%にのぼる。この割合は、年々増加しており、1965年の頃と比べてみると女性が約4倍、男性が約13倍に増えている。高齢者のひとり暮らしは今後も続々と増えていくようだ。超高齢社会もここまで進行すれば、解決困難だろう。これからの時代に求められるのは、まさしく本書のタイトルであるひとり暮らしで一生を終えるための「ひとり終活」の方法や心構えではないだろうか。

 ひとり暮らしの不安とは、誰かに助けてほしいときに助けてもらえないかも、どうしたらいいか分からないという不安だろう。つまり「自立」に対する不安だ。本書では4つの自立についてふれている。

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(1)身体的自立
(2)経済的自立
(3)生活的自立
(4)精神的自立

 (3)の「生活的自立」とは、家事能力などを指し、「身の回りのことが自分でできるかどうか」という意味だ。今まで妻に家事を任せていたが、突然「ひとり」になってしまった男性などが該当するだろう。この4つの自立を果たしていなければ、高齢のひとり暮らしは、辛く苦しいものになる。

 多くの自治体には、ひとり暮らしをしている高齢者の自宅に、日常の家事を手助けしてくれる生活援助員やヘルパーを派遣する制度がある。利用制限はあるが、自己負担は1回につき数百円程度。また、高齢者はトイレや入浴に不安が出てくるので、自宅をバリアフリーにする手段もある。介護保険や多くの自治体のそれぞれに補助金を出す制度があるので、そちらも確認してみるといいだろう。さらに、子どもの近くに引っ越すという手段もある。いわゆる「呼び寄せ」だ。だが、健康なうちに引っ越しするならまだしも、健康状態が悪くなってからの新しい環境は、高齢者にとってストレスだ。さらに、子どもが社会人で、呼び寄せたのはいいが、結局日中はひとりになる場合、高齢者が余計家に引きこもってしまうことがある。もしくは、専業主婦の娘と一日中一緒に家にいて、かえって険悪になってしまう 場合もある。「呼び寄せ」は多くの家族が考える手段だが、だからこそ大いに話し合う必要がある。

 上記の選択肢以外に、シェアハウスに住むという方法もある。お互いのプライバシーや生活空間を大切にできる仲間であれば、意外と高齢者になってからのシェアハウスも楽しいかもしれない。東京都世田谷区では、高齢者の自宅の空き部屋を若者に貸し出す取り組みを、NPOと共同で実施している。また、名古屋市では共同居住事業「ナゴヤ家ホーム」なるものを運営しているという。公営住宅での高齢者ルームシェアだ。3人入居用と2人入居用があり、家賃は3万円程度らしい。京都府城陽市も民間のシェアハウスがある。「ママズ&パパス」だ。1階は喫茶・軽食カフェになっており、入居者は可能な範囲でスタッフとして参加できる。この他にも、高齢者シェアハウスができそうなところはいくつかあるようだ。

 本書では、認知症になった自分を守ってもらう「任意後見制度」、急に倒れたときに備える「見守りサービス」、体が不自由になったら生活を託す「任意代理契約」、葬式や墓の手続きを代行してもらう「死後事務委任契約」なども紹介している。気になった方は本書でチェックしてほしい。

 「終活」というとマイナスなイメージがつきまとうが、本書を読んでいると、どうやら「終活」とは、他人に迷惑をかけない、他人の手を煩わせない、自分で最後まで何とかする方法を考えるということのようだ。つまり、他人に迷惑をかけてもいいと考えていたり、ぽっくり死ねる自信があったりする人は、やらなくてもいい気がする。ひとり暮らしをエンジョイしている高齢者などは、本書は不要だろう。「ひとり」がちょっぴり不安な真面目な方は、本書を手にとってみてもいいかもしれない。

文=いのうえゆきひろ