中田「ある人にとってはすごく興奮させるもの。それが“変態”」青山「普通に町を歩いているだけで何もかもがエロい」【オリエンタルラジオ×青山裕企『DOUSEI』鼎談 後編】

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公開日:2016/10/5


 デビュー11周年を迎えたオリエンタルラジオの記念写真集を、『スクールガール・コンプレックス』、『パイスラッシュ 現代フェティシズム分析』の青山裕企氏が熱写した。「もし、オリラジのふたりが一緒に暮らしていたら」という設定で撮り下ろした同性どうしの同棲は、「フェチ視点」と「変態性」を大絶賛されてきた写真家の目にどう写ったのか? 中田敦彦氏が「すべてを任せました」と信頼を寄せる“青山裕企ワールド”の魅力とは? 『オリエンタルラジオ×青山裕企 写真集 DOUSEI ―ドウセイ―』刊行記念鼎談で、3人に思いのたけを語り尽くしてもらった。

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僕がやりたい「変態」は青山さんの写真の余白にある(中田)

中田 僕は、褒め言葉として青山さんのことを変態写真家だと言っていて、一緒に究極の変態写真集をつくりたいと思ったんです。でもそう言うといろいろ誤解を招きやすい。僕がやりたい「変態」は青山さんの写真の余白にあるんですけど、すぐには理解してもらえない世界だと思うんですよね。その何がいいのか、誰にでもわかるわけではないんだけど、ある人にとってはすごくいいもの、興奮させるもので。それが僕が意味する「変態」なんです。

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青山 でも「変態」って言葉は強いですよね。僕は10年ぐらい前からずっと変態、変態って言われ続けてきたんですが、写真家の立場で言うと、撮った写真には責任を持っているので「青山って変態だな」って思われても別に構わないんです。ただ強い言葉ではあるので、言葉だけがひとり歩きされるのは困りますけど。今回の写真集はすこぶる評判が良くて自信を持っているので、いい写真集がつくれたなと本当に満足しています。

中田 俺も「これがほしかった!」っていう感想を聞いたとき、これまでの写真集の企画の立て方が間違ってたんだと納得しました。某お笑いコンビが、全裸でお互いの局部を握り合うような相当激しい写真集を出したんですけど、それを見たとき「売れるのはこれじゃないな」と直感的に思ったんですよね。男性が企画するとなぜかそうなる。

そういう意味で、『DOUSEI』は、女性にヒアリングして、女性の担当者がついて、青山さんがつくればこうなるっていうことを証明した写真集だと思います。つまりこれは静かなる革命で、パッと見た感じは何がすごいのかわからない究極形なのに、「これが欲しかった」と読者に言わしめることができる、唯一にして最新の男性写真集なんですよ。

青山 女性の考え方は僕たち男にはわかりませんけど、藤森さんのことを撮っている間にドキドキしてきたとき、読者の感覚に近くなっている感じがして、あ、この写真集は成功するなと思ったんですよね。単に同棲コンセプトで、男二人の絡みをパパっと撮っても何も起きませんから。

中田 これを見て、「ただ男同士が同棲してるのがエロいんでしょ」っていう見方をするのは、ジャンルに分かれたエロですよね。でもこれはそういう写真集じゃないですから。今まで市場になかったニーズに応えた本なので。……藤森くん、もう帰りたいですか?


藤森 なんだかもうお話が難しくてね。僕は「買ってください」としか言えませんので。

青山 藤森さん、実はもっと脱ぎたかったんじゃないですか? 

藤森 いえいえ、バランスですから。体も全然仕上がってなかったですし(笑)。この肩の写真は気に入ってますけどね。筋肉つきすぎてない感じもまたいいと思うので。今回は本当に、青山さんの言うこと聞いてよかったです。

普通に町を歩いているだけで何もかもがエロい(青山)

青山 タレント写真集ってファンの方がターゲットになると思うんですけど、そこを超えていきたいっていう思いが常に僕のなかにあるんですね。『DOUSEI』は発売前からかなり話題になりましたし、ファンではないけど面白いよねって言ってくれる人に届いてる感じがしています。

藤森 ツイッターもすごかったですからね。リツイート数が1万超えたんですよ。アイコン見ても、「あ、これ俺等のファンじゃないな」っていうのが目につきました、キャラクターものとかね。こういうマーケットがあるなんて、本当にびっくりです。

中田 これは慎吾がいたから成り立った企画ですよ。慎吾とじゃなければやらなかったね。彼がいい感じで3人のバランスを保ってくれたので。もし俺と青山さんだけだったら、きっと全然違うものになったと思います。


青山 私は男性を撮る楽しさを改めて感じましたね。それと、もともと女の子をフェティッシュに撮りたいと思ってやってきましたけど、変態性とかフェティッシュなものって日常のなかにあるんだなって思うんです。普通に町を歩いているだけで何もかもがエロいんですよね、受け取り方によっては。そんな自分はやっぱり変態だなという気がしてきましたけど(笑)。

男性のコンビを撮っててドキドキしたのは、多分、オリラジの二人だったから。他のコンビではこうならなかったでしょうね。中田さんの僕の写真に対する理解とか、さまざまな要因が重なってできた本なので、きちんと届くところに届く本になったと思います。

中田 僕は青山さんのチャレンジングなところが好きで、『むすめと!ソラリーマン』の延長線上のチャレンジに携われたのがすごく嬉しかったですね。僕としてもこの写真集はすごい実験で、どのぐらい社会に受け入れられるのか気になる。自分が想像しているレベルと近かったらすごく嬉しいです。

その結果が明らかになってはじめて、僕にとっては完成といえますね。もし今はわかってもらえなくても、きっと後世で、あの写真集がターニングポイントだったよねと言われる作品になると思ってます。

藤森 僕はまだ裸の写真集はあきらめてないですからね。でもこの写真集が残るのはすごく嬉しいですね。一緒に仕事してるアイドルの子たちから写真集をよくいただくので、僕もこれを恥じらいなく渡せます。表紙で変な裸にならなくてよかったです(笑)。

取材・文=樺山美夏 撮影=山本哲也