最近のグルメマンガに異変? 料理の腕より”うまみ”と”クセ”のある話題作5選!

マンガ

公開日:2016/10/24

 ダ・ヴィンチニュースでも何度か言及しているが、最近、「グルメマンガ」が盛り上がっている。一昔前のグルメマンガというと、料理人やそれに準ずる素人が腕をふるい、時には料理の味で競い合うという戦いぶりも見せていた。しかし、ここ最近では、既存のグルメマンガとは一線を画すような作品が続々登場している。そこで今回は、一風変わったグルメマンガを紹介しよう!


温かい食卓を介し交流する、未亡人と高校球児

 『八雲さんは餌づけがしたい』(里見U/スクウェア・エニックス)は出版されてすぐに、「高校生が餌づけされてるw」と、ネット上で話題を集めた作品だ。主人公である八雲は、最愛の旦那さんを亡くした未亡人。大好きだった料理を振る舞う相手を失い、無気力な毎日を送っている。そんな彼女の前に現れたのが、高校球児である大和。ひょんなことから彼に料理を食べさせることになった八雲さんは、彼の食いっぷりに快感を覚え、いつからか彼にご飯を作ることが生きがいになっていく――。本作では、調理工程はほとんど描写されない。そこで描かれるのは、料理を介して交流する二人の姿。家族でも恋人でも友人でもない二人が、一つのテーブルを囲み距離を縮めていく。しかし、これこそが料理の醍醐味なのかもしれない。

美味しいものはツラい記憶を忘れさせてくれる

 『忘却のサチコ』(阿部潤/小学館)の主人公・サチコは、結婚式当日に新郎から逃げられてしまった不運な女性。自分は別に傷ついていない、と強がるものの、ふとした瞬間に彼のことを思い出してしまう。そんなサチコを救ってくれたのは、美味しいご飯。ランチで訪れた定食屋で「サバの味噌煮定食」を食べた時、あまりの美味しさに失恋のショックすらも忘れてしまったのだ。美味しい食事は、嫌なことも忘れさせてくれる。それを知ったサチコは、彼との思い出を忘却するために、美食を求めて東奔西走し始めるのだが……。本作は、「美味しいものを食べると、幸せな気持ちになれる」という、当たり前だけど忘れがちなことを教えてくれる。忙しさのあまり、食生活がおざなりになっている現代人に、ぜひ読んでもらいたい一作だ。

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食べるものに困ったら、道端の雑草を食すべし

 最近のグルメマンガには、普段はなかなか口にしないような食材を調理する作品もある。『ほおばれ!草食女子』(あらたまい/芳文社)で毎回取り上げるのは、雑草だ。主人公である日高ちゅーりっぷは、24歳にして会社をクビになってしまった貧困女子。貯金もないため、次の職探しどころか明日のご飯にありつくことすら難しい。そんな彼女を救ってくれたのが、隣に住む女子大生・スズナ。田舎出身のスズナは、雑草の調理法、そしてその美味しさをちゅーりっぷに教えてくれるのだ。登場するのは、ツクシやヨモギ、フキ、セリなど、身近に生えている野草。それを採取し、丁寧に調理する工程まで描かれているので、真似してみようかなという気持ちにさせられる。万が一無職になってしまった場合、バイブルになりそうな一冊である。

雑草すらなければ、ゲテモノを食べればいいじゃない

 上述の『ほおばれ!草食女子』を読んで、「雑草かよ……」と思った人、まだまだ甘い! 『桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?』(ぽんとごたんだ/双葉社)で食材として取り上げられるのは、カエルやサソリといった、いわゆるゲテモノなのだ。それを食すのは、食いしん坊な女子高生・桐谷。彼女は幼なじみである理科教師とともに、日々理科室でゲテモノの調理に勤しむのである。しかし、そこはさすがグルメマンガ。どんな食材であろうと見事な一品に仕上げてしまうのだ。たとえば、カエル。皮をはぎ、内臓を丁寧に取り除き、イラクサやアシタバなどの野草と煮込めば、鶏ガラスープにも似たサッパリとした味わいの料理になるのである。これは桐谷さんでなくとも、ぜひ食べてみたくなるはず。食糧難を迎える前に、熟読しておきたいグルメマンガだ。

おとぎの国には、巨大なソーセージが住んでいました

 最後に紹介するのは、その独特のシュールさからSNS界隈を賑わせている本作だ。厳密に言うと、『おとぎのファルス』(九目/徳間書店)はグルメマンガではなく、ギャグマンガに分類される作品だろう。しかし、なぜ今回取り上げたのかというと、作中に登場する動くソーセージ・ブルストが話題を集めているからだ。彼は、主人公・アメリアが暮らすことになった肉屋の住人。なぜ動き出すようになったのか、その正体はなんなのか……それらは一切明かされぬまま、物語は進むのだが、唯一わかっているのは、彼がとにかく美味しそうだということ。自ら入ったお風呂の残り湯(?)で作ったスープは、非常に透明感があり、思わずヨダレが出てきそうになるほどだ。物語はその不思議や肉屋を舞台に、ちょっと変わったキャラクターたちが織りなすコメディで彩られる。しかし、どうしてもブルストが美味しそうで目が離せない。ということで、本作も一風変わったグルメマンガに選出させてもらおう!

 グルメマンガ市場で注目を集めている、これらの作品。ちょっと変わった作品が読みたいと思った人は、ぜひ手に取ってみてほしい。これらを読んでお腹が鳴るかどうかは、あなた次第だが。

文=五十嵐 大