万人が振り返る美貌を持つ女子高生はコミュ症だった!? 友達100人を目指してコミュ症美少女が奮闘するコメディーマンガ

マンガ

更新日:2016/11/7

『古見さんは、コミュ症です。』(オダトモヒト/小学館)

 『古見さんは、コミュ症です。』(オダトモヒト/小学館)は、『週刊少年サンデー』で連載されているコメディーマンガだ。主人公は、万人が振り返る美貌を持つ高校生の古見硝子(こみしょうこ)。しかし、この古見さんには絶望的な欠点がある。古見さんは…コミュ症なのだ!

コミュ症―とは。人付き合いを苦手とする症状。またはその症状を持つ人をさす。留意すべきは―苦手とするだけで、係わりを持ちたくないとは思っていない事だ。

 もし古見さんがコミュ症でなければ、万人が振り返る美貌を使って、ありとあらゆるテクニックで男たちを陥れ、悪女の華が開く人生もあっただろう。だが、人の世を生きるには辛すぎる欠点を持ってしまった古見さんは、彼氏100人ではなく、友達100人を欲していた。物語の始まりは、もう一人の主人公である只野仁人(ただのひとひと)との出会いだ。

 只野くんは、ごく普通の高校生だ。中学校生活が黒歴史となるまで悪化した中二病を抜け出し、高校生活は波風を立てぬよう空気を読んで過ごすと決めて入学初日を迎えた。学校の下駄箱で初めて会った同級生が、古見さんだった。古見さんに挨拶をする只野くん。……しかし沈黙が訪れる。戸惑う只野くん。ようやく「ギギギ」と首を軋ませながら古見さんは振り返って只野くんを見る。古見さんは只野くんが尻込みするほど見つめ、「ドドド」という爆裂心臓音と共に下駄箱から歩き去る。「なんだったんだ」と戸惑う只野くん。プルプル震えが止まらない古見さん。どぎまぎした出会いを引きずりつつも、只野くんが教室の机に座ると…隣には古見さんが座っていた! こうして2人は出会ってしまった。

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 この他、一連のコミュ症な症状を只野くんは見抜き、古見さんとクラスで2人きりになったとき、思わずぶつける。

 只野「もしかして、人と話すのが苦手なんですか?」
 古見「なななななななななななななな(以降、省略)」
 只野「…こ、古見さん…?」
 古見「なななななななななななななな(以降、省略)」
 只野「古見さん!?」

 古見さんがコミュ症であると悟った只野くん。黒板による筆談を重ねていると、只野くんが「古見さんの夢は?」と切り出した。古見さんは「友達100人作ることです」と答える。只野くんは「じゃあ僕が1人目の友達になるし、あと99人の友達作りも手伝うよ」とイケメンな回答をする。こうして2人は友達になった。

 2人が通う高校は、アクの強い者だけが集まる学校。高校入学試験は面接のみで、合格基準は個性! 奇人、変人、はぐれ者、異端者が集まる学校で、2人の友達作り奮闘高校生活が始まる。

 私は、オタク要素がつめこまれていそうなマンガは一切読まない。ましてや、日常のほのぼの系のマンガなど、毛嫌いしている。しかし本書は、『週刊少年サンデー』に初めて掲載されたときから欠かさず読んでいる。なぜなら「間」の使い方が絶妙なのだ。また、遠くからのツッコミ(おそらくこの表現が適切)が非常にうまい。ギャグマンガを欲している読者は、ぜひ読んでいただきたい。

 最後に、只野くんが古見さんの友達作りのために奮闘する一部を紹介しよう。只野くんは、イケてる女子グループのリーダー山井さんに声をかける。

 山井「ん? なぁに? 只野くん。」
 只野「いや、あの実は古見さんがね……ともだ……?」
 山井「は? なにあんた? なんであの崇高なるお方の名前呼んでんの? 呼ぶにしたって『古見様』だろうがダメ男。古見様の隣の席だからってチョーシくれてんじゃないわよカス。アンタ教室来る前古見様と話してたみたいだけどそれどんな奇跡か分かってる? 馬の糞以下のアンタが古見様と同じ空気吸えてるだけでもありがたいってのよカス。カスカスカスカスカスカスカスカス(以降、省略)」

 私は、只野くんを愛したい。いや、愛している。

文=いのうえゆきひろ