「赤羽」と「四条大宮」の共通点とは? “街歩きの達人”と不動産の達人による『もし京都が東京だったらマップ』が話題!

社会

公開日:2016/10/23

『もし京都が東京だったらマップ(イースト新書Q)』(岸本千佳/イースト・プレス)

 2015年年末、京都で不動産業を営む岸本千佳さんが「もし京都が東京だったらマップ」を個人ブログにアップした。最初は友人のあいだで楽しんでもらえればとの思いだったが、みるみるうちにシェアされ、ブログ閲覧は20万ビューを記録。「Yahoo! ニュース」に取り上げられたほか、「NEWS ZERO」(日本テレビ系)でも放映され、話題をよんだ。

 本書『もし京都が東京だったらマップ(イースト新書Q)』(岸本千佳/イースト・プレス)はこのブログの内容をもとに制作された。〈 「もし京都が東京だったらマップ」をつくった理由〉/〈京都×東京徹底比較! 街歩きが10倍楽しくなるマップの読み方〉/〈京都は「暮らす」目線で見るとおもしろい〉に加え、著者と三浦展氏による特別対談〈「街歩きの達人」と語る京都の魅力〉も収録されている。

 著者・岸本千佳さんは1985年京都生まれ。2009年滋賀県立大学卒業後、東京の不動産会社に勤務。シェアハウスやDIY賃貸(賃貸物件を自分自身でリフォームすること)の立ち上げに従事。その後京都に戻り、2014年に会社を創業。物件オーナーから不動産の企画・仲介・管理を一括で受け、建物の有効活用を業としている。そのほか、改装できる賃貸サイト「DIYP KYOTO」の運営、京都への移住者を応援するプロジェクト「京都移住計画」の不動産担当、暮らしに関する執筆などでも活動している。「人生デザインU-29」(NHK Eテレ)にも出演。

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 対談相手の三浦さんは、社会デザイン研究家。1982年一橋大学卒業。2社を経て、1999年、カルチャースタディース研究所設立。マーケティング調査、商品企画などを行うほか、家族、都市問題を独自の視点で捉えている。光文社新書『下流社会』(80万部のベストセラー)や『新東京風景論』(NHK出版)、『高円寺 東京新女子街』(洋泉社)など著書多数。

 では岸本さんはどういう目線で東京と京都の街を比較したのか?

 たとえば「比較(1)(京都)四条大宮×(東京)赤羽―表通りからはわからない立ち飲み天国」には、その地区の類似点と相違点、それぞれの詳細があげられている。

●類似点
・表はファミリーや若者向け、裏は赤提灯のおじさん向けの両面あり
・両駅ともターミナル駅
・古くからの住宅街や団地がある

●相違点
・四条大宮=武士の街/赤羽=軍事産業から発展した街
・四条大宮=土地が平坦/赤羽=起伏が激しい

 両者は相違点もあるものの類似点が圧倒的に多く、〈東京で「赤羽」の雰囲気が好きなら、京都では「四条大宮」に行ってみよう!〉ということになる。

 本書にはほかにも「比較(3)(京都)叡山電鉄沿線×(東京)JR中央線沿線― 一度住んだら抜けられない文化のるつぼ」の項がある。やはり相違点・類似点があげられ、相違点はあるが、「東京でJR中央線沿線の雰囲気は、京都なら叡山電鉄沿線の雰囲気に似ている」という。(1)四条大宮、(3)叡山電鉄沿線…のようにナンバーを振った京都のカラーマップも表紙の裏に挟み込まれており、ビジュアルでわかりやすい。

 岸本さんはあらためて、京都は1か月間かけて1日1街を歩き、東京は6日間で15万歩歩いたという。本書はまさに街歩きのたまものなのだ。

 京都は何度も観光しているけれど地域の雰囲気まではイマイチわからない、とか、住んでみたいけどどこがいいのかまではわからないとか、よりディープな街の案内をしたい人などには読んでほしい1冊。京都の街になじみがなくても、「京都のここら辺は、東京でいうとあの辺の雰囲気なんだ!」とわかる、新しいタイプの京都案内。しかも新書版でハンディ。京都への旅のお供にぜひ、オススメだ。

文=塩谷郁子