切手の裏側の糊、リップクリームのカロリーまで確認。過食嘔吐を繰り返す「痩せ姫」たちの実態

社会

更新日:2016/10/26

『痩せ姫 生きづらさの果てに』(エフ=宝泉薫/ベストセラーズ)

 入院させられるぎりぎりの体重が理想!という摂食障害の「痩せ姫」。病気や不幸と見なされがちだが、彼女たちは摂食障害という生き方を自ら選んでいるのだという。『痩せ姫 生きづらさの果てに』(エフ=宝泉薫/ベストセラーズ)は、彼女たちの体形や精神性に魅せられ、ダイエットや摂食障害をテーマに企画・執筆をする著者が、彼女たちと交流をはかることで知り得たリアルを書いた1冊だ。著者のブログ「痩せ姫の光と影」には、痩せ姫からのコメントも多く寄せられている。

 一見して痩せている女子が、さらなる痩せ体形を目指すダイエットブームの昨今。女子憧れのスレンダー芸能人の中でもツートップとして人気があるのが、桐谷美玲と河北麻友子だという。ダイエットを試みる女子の多くは、ある程度のところでやめたり挫折したりするのだが、摂食障害(拒食症または過食症など)の痩せ姫は、徹底的に取り組みどんどん加速していく。理想とする体形はBMIが15以下。体重は30キロ台、20キロ台。天使の羽がはえそうな肩甲骨や、お姫様抱っこがラクラクできる軽い身体を目指し、切手の裏の糊や、リップクリームのカロリーまで気にするようになるという。

 ダイエットは、制限食に始まり、噛んで口から出すチューイング、指での嘔吐。「完吐き」を目指しチューブを口から差し込んでの嘔吐や、下剤の乱用などは、間違えれば命を落としかねない。嘔吐といえば、故・ダイアナ妃も長い間、過食嘔吐に苦しんできたことを告白している。SNSを通じて、家族や医者の目をカムフラージュする方法や、かき氷による栄養補給などの情報を共有し、仲間との友情を育んでいる痩せ姫は、意外と明るく楽しそうだ。

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 摂食障害には支配的な母親と従順な娘という構図を典型例として、複雑な家庭環境、体形 への強迫観念の強さといったものも深く関係しているという。かつて「激痩せ」で衝撃を与えた宮沢りえは、母と娘の問題など、さまざまな要因を抱え拒食症になった。しかし結婚、出産も果たしたうえ、ぎりぎりの細さを保ちながら美しいままで活躍していることから、「痩せたままで自己実現していきたい」痩せ姫の、理想の存在だという。また反対に「胸も生理もいらない」という自己実現の形を望む痩せ姫もいるという。

 少数派といえる、これらの痩せ姫たちが、今さら多数派と理解しあって生きることは容易ではない。しかし痩せ姫のまま幸せを感じて生きていくことは可能なのだ。著者は摂食障害という病気を個性として捉えてほしいと述べる。痩せ姫の壊れやすい心を知るほどに、痛々しさと同時に神々しさすら感じ、あなたのその場所で「生きてほしい」と強く思った。

文=泉ゆりこ