おやつは健康にいい!? 賢い間食で無理せずダイエット!

健康・美容

公開日:2016/10/29

『太らない間食』(足立香代子/文響社)

 身体をあまり動かさなくても済むうえ、美味しくてハイカロリーなものがあふれている現代社会。そこに生きている我々は気を抜くと、すぐに身体にムダな肉がついてしまう。見た目の問題だけだったらまだいいが、高すぎる体脂肪率は糖尿病や高脂血症といった怖い生活習慣病も招き寄せる。実際、去年買った洋服が入らなかったり、人間ドックの結果を見て青ざめたり、といった経験をしたことのある人も多いのではないだろうか。

 こういった事態を避ける、あるいは解消するために、人はダイエットを決意する。なかでも食事制限は、数あるダイエット法のなかでも基本中の基本。まっとうなダイエットを試みる人なら、運動とともに必ず取り組むことになるはずだ。

 ただこの食事制限というのが、意外に曲者なのである。というのも、王道のカロリー制限から、朝食抜き、糖質制限などなど、これまでさまざまな説が唱えられてきたからだ。間食ひとつの扱いをとってみても、「積極的にするべき」派と、「すべきではない」派という2大派閥が存在する。

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 もっともこの間食論争に関しては、そろそろ決着がつきそうだ。結論から言うと、「一定の条件を満たせば、おやつはダイエットの役に立つ」らしい。少なくとも本書『太らない間食』(足立香代子/文響社)はそう言っている。ベテランの管理栄養士である著者によると、適切な間食には次のような効果が期待できるという。食事では足りない栄養素の補給、集中力の維持やストレスの軽減、夕食の食べ過ぎ防止、などなど。まさにいいことずくめ。これは食べることが好きな人にとっては朗報と言えるだろう。

 もちろんなんでも食べていいわけではない。間食は200kcal以内に抑える、血糖値を急激に上げるもの(糖質メインの食品)は食べない、などのルールが存在する。これは著者が、血糖値のコントロール、および糖質の過剰摂取を避けることを重視しているため。著者は糖質制限論者ではないが、それでも糖質の取りすぎや血糖値の乱高下には、身体の糖化や糖尿病といった健康リスクがあると指摘する。普段の食事はもちろん、間食においても糖質には要注意らしい。ただし糖質が多い食品を食べるのが一切ダメだというわけではないのでご安心を。こうしたものを食べたくなってしまったときでも、タンパク質を足すことで血糖値の急激な上昇を抑えられるという。たとえばチーズにクラッカー、シャケの入ったおにぎり、ヨーグルトにジャムといった具合。食べ方のルールを守れるなら、コンビニで手に入る食品や市販の栄養補助食品を利用してもOK。忙しいビジネスパーソンでも、気軽に始められるゆるさが嬉しい。枠も200kcalあるので、工夫次第でいろいろ楽しめそうだ。

 加えて、これらの条件を満たしつつ、3度の食事で不足しがちなカルシウムやビタミンC、マグネシウムなどの栄養素を補えるなら、さらに理想的な間食になる。どうやら心と身体に同時に栄養を与えてくれるものを食べるのが、賢い間食ということになりそうだ。普段の食事に偏りがあり、栄養不足に陥ってしまいがちな人も、上手に間食をすることで栄養失調状態から脱却できる。むしろそういう人こそ間食をうまく利用し、栄養バランスを整えるべきなのだ。

 だから、食が細くなりがちな高齢者は積極的に間食を食べるべき、と著者は言う。そうすることで不健康な体重減少を食い止めることができ、高齢者が最後まで元気に過ごすことができるようになる。間食は、ダイエットだけでなく老後の健康維持にも役に立つのだ。間食パワー恐るべし、である。

 間食が毒になるか、薬になるかは食べる人次第。いい加減なものを食べ続ければ、そのツケは身体に回ってくる。逆に賢く食べれば、身も心もハッピーに。正しく食べ物と付き合うことの大切さを、この本は教えてくれる。本書は最新の栄養学に基づいてはいるが、決してマニアックな本ではない。むしろこれまで食に興味がなかった人にこそ読んでほしい本だ。1冊通して読むことで、きちんとした食生活を送るコツが自ずとわかるようになっている。「今の食生活がダメダメなのはわかっているけど、とりあえず何から始めていいかわからない」――そんな悩めるあなたにオススメしたい。

文=遠野莉子