子どものらくがきを刺しゅうで活用! 新しい宝物を生み出すアイデアが満載の『井上アコのらくがき刺しゅう』

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/13


『井上アコのらくがき刺しゅう』(井上アコ/自由国民社)

 わが子の描いた「らくがき」をみて、「この子もしかして天才では……!?」と親バカを発揮したことはないだろうか。そうでなくても、チラシの裏の走り描きさえ全部保管しておきたくなるのが親心。だけど実際にそんなことをしていては、家じゅうがものであふれてしまう。そんな困った親御さんにおすすめなのが『井上アコのらくがき刺しゅう』(井上アコ/自由国民社)。その名のとおり、子どものらくがきを刺しゅうにして活用してしまおう! という画期的な一冊だ。

 全国各地で「ライブ刺しゅう」なるイベントを開催している著者の井上さん。会場に訪れた人たちが、その場で描いた絵を、そのまま刺しゅうにしてしまうのだという。

 たとえばハンカチやポーチ、ときにはTシャツなどの洋服に。自分で刺しゅうを加えれば、市販のものも、世界でひとつだけの宝物に様変わり。それが自分の描いた絵が刺しゅうされていたらなおさらだ。そして、その楽しみはなにも子どもに限った話ではない。大人同士でも「あのキャラクターってどんな顔してたっけ?」とらくがきに興じたことはあるだろう。その結果、何度見ても笑ってしまうような独創的なイラストが誕生したこともきっとあるはずだ。そんな他愛のない「らくがき」を大活用してしまおうというのが本書の意図。

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 縫い方を基本から伝授するとともに、これまでイベントに参加した子どもたちの渾身の作品などが、元の絵と刺しゅうとともに紹介されている。

 子どもたちの感性は瑞々しく、えてして独創的だ。ただの「らくがき」とあなどるなかれ、刺しゅうをほどこしたとたん、洗練されたデザインにも見えてくるから不思議。不器用だからうまく刺しゅうができる自信がない……と不安になる必要もない。糸の描くでこぼこや曲線は、むしろ深い味になる。同じ図面でも、二つとして同じ絵が完成しないのも手作りのよさ。図面を決めたらただ、針に通した糸を一刺し一刺し、心を込めてじっくり絵をみながら丁寧に縫いつけていくだけでいいのだ。

 とくにお気に入りの絵は、シンプルな布に縫い付けて額に入れて飾ってもいい。

 手ごろなポーチや洋服が見つからなければ、自分でつくってしまえばいい。コースターやクッションカバー、エプロンにブックカバーなどに縫い付ければ、毎日の生活がぐっと楽しくなるだろう。

 アルバムに写真で残すのもいいが、自分の手で描いたものを、手作業で残すことができれば新しい思い出もつくることができる。ママが刺しゅうするほか、お孫さんのためにサプライズプレゼントをしたいという、おばあちゃまも!心があたたまるクリスマスプレゼントにもよろこばれそう。ぜひ一度、試してみてほしい。

文=立花もも