いちいち“真っ赤”になる林檎少年と女慣れしたクラスメート、友情に似た恋の行方は?

BL

公開日:2016/11/14


『赤い林檎の中身事情』(麻酔/白泉社)

 人付き合いは苦手。触られると無条件で真っ赤になる。友達をつくれずにいた転校生・優弥の心の扉を開けたのは、空気を読まないやんちゃなクラスメート・圭二だった――。正反対な男子高生ふたりによる、甘酸っぱくもじれったい学園ラブコメ『赤い林檎の中身事情』(麻酔/白泉社)。電子書籍で人気のマンガ家による初コミックスが26日に発売された。

 唯一の家族であり、家事全般がまるで駄目な父親を心配した優弥がついていった転勤先は、コンビニはなければ電波も悪く、駅まで徒歩2時間という想像以上のど田舎。口下手なせいで友達作りにもつまづいて、暇を持て余していた優弥にやたらとちょっかいをかけてくるのがクラスメートの圭二だ。女の子との噂も絶えず、自分とはまるでタイプの違う圭二のペースに呑み込まれるうち、優弥はいつしか淋しさを癒やされていく。一方、最初はひとりきりでいる優弥の様子を気にしていただけの圭二だが、色白で華奢な優弥の可愛らしさにどんどん絆され、はてには夢まで見るように。女の子としか付き合ったことはないはずなのに、頼りない雰囲気ながらも夢を持ち、自分の言葉で語る彼の芯の強さに惹かれてうっかり告白したうえ、不意打ちでキスまでしてしまう……という王道学園ラブコメディなのだが、特筆すべきはなんといってもいちいち真っ赤になる優弥の表情だ。

 決して女の子みたい、というわけではない。あくまで優弥は、不器用で気弱な男の子。少年らしいプライドもあれば意地もある。だからこそ滲みでる彼の魅力に、圭二が徐々に心奪われていくさまが本作では丁寧に自然に描かれる。しかも真っ赤になるのは毎度のことでも、その様子は毎回、微妙にちがう。関係が深まるごとに見せてくれる新しい表情に読者もまた胸をつかまれていくのだ。男同士という壁にくわえて、東京に戻ることが決まっている優弥と地元を愛する圭二が直面する進路の分かれ道など、少しずつ乗り越えながら恋人同士になっていく2人のピュアなやりとりをぜひ堪能してほしい。

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 ちなみに女慣れしている圭二は、相手が優弥であっても一線を超えることにためらいはない。ナチュラルにぐいぐい押し倒していく圭二と、及び腰で貞操を守ろうとする優弥の駆け引きも読みどころだ。なお、コミックスでは、電子版配信では描かれなかった“その後”の2人が収録されている。さんざんお預けをくらっていた圭二の想いは遂げられるのか? 電子版からのファンにも嬉しい一冊だ。

文=立花もも