『逃げ恥』の偽装恋愛は「結婚してから好きになる」21世紀の理想スタイルかもしれない

テレビ

公開日:2016/11/15

『逃げるは恥だが役に立つ』1巻(海野つなみ/講談社)

 「結婚したくない」と考える20代の男性は2015年に2割(21.6%)を超え、2008年度の2倍近くに増えたことが(※20代女性も12.9%に増加)、独立行政法人・国立青少年教育振興機構の調査(全国20〜30代の男女4000人対象)でわかった。

 細かい数字は当ニュースを詳しく報じているコチラを読んでもらいたいのだが、要は「男女とも年代が上がるにつれて『早く結婚したい』人の割合が低下し、『結婚したくない』人の割合が増えている」……のだそう。

 同機構は、年収別の「若者の結婚観などに関する調査」も行っており、その結果を見ると、ほぼ“正比例”のかたちで年収の低い人ほど「結婚したくない」人の割合が高くなっている。つまり、「結婚したくない」という若者の増加は「若者の年収の低さ」に要因がある、ということだ。

advertisement

 ネット社会における“生身の人間同士”のコミュニケーション不足・若者男子の草食化……ほかにもさまざまな要因はあるだろう。が、20代男女の結婚願望を削ぐ、もっとも大きな“障害”として「経済的不安」が慄然と立ちはだかっているのは、残念ながら否定はできない。

 そんな国政的にもありがたくない実状のなか、ネット版オリコンによると、TBS系の連続ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』が好調らしい。

 テーマは「偽装恋愛」。新垣結衣演じる「職ナシ」「彼氏ナシ」「居場所ナシ」の主人公・森山みくりが、星野源演じる恋愛経験のない独身サラリーマン・津崎平匡と契約結婚し、“ワケありの新妻”として生活を始めていくうちに、少しずつ心が開かれていく……といったストーリーである。

 ここには、現在の若者たちが抱えるモヤモヤ感を一気に払拭する“新しいフォーマット”の提起が(ガッキーダンスの大ブレイクに多少埋もれながらも)なされている。

「恋愛→結婚」という常識的な“段取り”を一度チャラにして、「結婚→恋愛」に発想転換しているのもアリなのでは? もっと乱暴に言ってしまえば「つべこべぬかしてないで、とりあえずは結婚しちまえや!」ってことなのだ。

 そりゃあ、“早まった結婚”から生じるリスクはたくさんある。ダメになったら戸籍にバツは付くし、おたがいの家族をも巻き込んでしまうし、別れるのに慰謝料とかも必要になってくる、友人に「離婚しました」と報告するのも辛かろう……しかし、“結婚”という関係にまで自分を追い込む、言い換えると「まずはカタチから入る」ことによって、相手の長所がより見えてくるという側面もなくはない。“結婚”をきっかけに「偽装恋愛」が「本物の恋愛」となるケースだって、わりとあり得るのではないか……?

 『逃げ恥』は、「貧乏だから…」と及び腰になっている今の若者たちが潜在化に眠らせている“結婚願望”を、「結婚してから好きになる」といった“既成概念的順番の逆転化”によって満たす、時代にジャストフィットした“21世紀における理想的な成功恋愛譚の一つ”だと私は考える。あと10年20年もすれば、バツが3つくらい付いていたり、親に内緒で結婚したり……の“破天荒”が当たり前となっているのかもしれない。

文=citrusネットニュースパトローラー 山田ゴメス