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「orange -未来-」の泣きポイント 「アニメ映画が面白い!事件は劇場で起きている」第1回 

 2016年秋は、泣けるアニメ映画が多い。すれ違う主人公ふたりを描いた『君の名は。』、聴覚障害を持つ少女とそれを取り巻く人を描いた『聲の形』、そして第二次大戦前後の広島・呉で生きた女性の日常を淡々と描く『この世界の片隅に』。いずれも異なった個性だが、思わず涙してしまう良質の作品だ。

 そのなかで泣ける映画の極めつけが、2016年11月18日から2週間限定で劇場公開される『orange -未来-』だ。そもそもこの映画、登場するキャラクターたちがよく泣く。友情、愛情、誰もがまっすぐで一途である。
 泣いているのは作中のキャラクターだけでない。映画を観ている僕自身もだ。とりあえず、最初の5分で涙腺が切れた。映画は1時間足らずなのだが、たぶん80%ぐらい涙が流れていた気がする。

 『orange -未来-』は、高野苺のマンガを原作にしたTVアニメの劇場版になる。主人公の女子高校生・高宮菜穂は、10年後の未来の自分から手紙を受け取る。そこには転校生・成瀬翔と出会い、彼に恋をすること、そして彼が17歳の冬に死ぬことが書かれていた。さらに10年後の菜穂は、その死は避けられたはずと、未来を変えるように現在の菜穂に頼むのだ。同じよう10年後に自分から手紙を受け取った仲間の須和弘人、村坂あずさ、萩田朔、茅野貴子と共に、未来を変えるために行動するのだが……。
 劇場版はTVシリーズに新作カットを加え、再編集した。いわば総集編ではあるが、原作やTVシリーズと異なるのは、主人公の菜穂、翔でなく、ふたりを見守り、結びつけようとする須和の視点から描かれたことだ。これが映画に新しさを注ぎ込む。

 TVシリーズでは、ハッピーエンドで終わったように見えるラストだが、『orange』の結末には、実際には「悲劇」が潜んでいる。本作には、翔が死んでしまった未来の世界、そして翔がいなくなることを防ごうとする世界が並行して存在する。視聴者から見れば、現在の世界の悲劇は書き換えられ、同時に愛する妻と子どもと暮らす須和も依然存在する。何となくうれしく、納得のいく結末だ。

 しかし、須和の視点から物語を見てみるとどうだろか?

 未来の須和や菜穂たちにとって、翔を失った過去は修正されていない。手紙を書くことで整理をつけたとはいえ、彼らが持つ後悔は依然残っている。そして、未来の変えられた世界に住む須和は、もしかしたら得られたかもしれない自身の望みを諦めている。つまり、幸せと悲劇は裏表なのだ。
映画『orange -未来-』では、TVシリーズではあまり描かれなかった「悲劇」が、未来の須和の視点で描かれることで浮かびあがる。観客はこれに涙してしまうのだ。男前過ぎて幸せを掴めなかった悲劇の主人公・須和、彼こそが『orange -未来-』の最大の泣きポイントだ。

映画『orange -未来-』特報2

映画『orange -未来-』

映画『orange -未来-』公式サイト

<数土直志>
ジャーナリスト。アニメーション関する取材・執筆、アニメーションビジネスの調査・研究をする。「デジタルコンテンツ白書」、「アニメ産業レポート」執筆など。2002年に情報サイト「アニメ!アニメ!」、その後「アニメ!アニメ!ビズ」を立ち上げ編集長を務める。2012年に運営サイトを(株)イードに譲渡。



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