雪による死亡事故の75%以上が除雪作業中!「吹きだまり」が一酸化炭素中毒の原因に!NHKのお天気お兄さんによる「気象災害対策」

生活

更新日:2020/9/1

『いのちを守る気象情報』(斉田季実治/NHK出版)

 今年も信じられないような自然災害がたくさん起こった。熊本地震、梅雨前線による九州での大雨、台風による甚大な被害。絶望的な力で襲ってくる自然災害に立ち向かう術はない。しかし、その自然災害が起こる仕組みと防護策を知ることができれば、被害の大きさも変わってくる。『いのちを守る気象情報』(斉田季実治/NHK出版)には、今後の生活で活かしたい気象情報とその防護策が紹介されている。

 本書は、NHKのお天気お兄さんである斉田季実治氏が書いた気象情報入門書だ。「台風」「大雨」「雷」「竜巻」「大雪」「熱中症」「地震(津波)」「火山」の8つの災害に焦点を当て、メカニズムなどの専門的なことは可能な限り優しく、災害が発生したときにいかに行動するべきか解説している。今回は「大雪」にしぼって紹介していこう。

 大雪や吹雪などの雪害と聞いて、最初に思い浮かぶのは「雪崩」や「車のスリップ事故」だろう。しかし、2010年度の大雪の被害について内閣府や国土交通省がまとめた資料によると、雪の影響で死亡した死者のうち、3/4以上が除雪作業中だったそうだ。

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 雪の事故は、雪に埋もれて発見が遅れるケースが多く、そのことが命取りになっている。すぐに救助ができるよう、除雪作業は2人以上で行うことが絶対だ。高齢者などがやむを得ず1人で除雪作業をする場合は、近隣同士が連携をとり、地域コミュニティが一斉に除雪作業を行う取り組みが必要だ。

 雪下ろしになれている人でもヘルメットや命綱を必ず着用し、はしごの固定を忘れない。晴れて暖かい日の午後は屋根の雪が緩んで落ちやすいので、軒下などの落雪に注意。除雪機の雪詰まりを取り除くときは、エンジンを止めてから棒などを使って行うこと。足を滑らせた際に、手や足が巻き込まれて死に至る事故が発生している。また携帯電話やスマートフォンを持って作業すると、万が一のとき自ら救助の連絡ができるので、実践してほしい。

 雪道で転んでしまう危険もある。転倒事故は頭を強く打って命の危険に関わる。靴は、底にピンやゴムなどの滑り止めがついているものを選ぶこと。横断歩道、バス乗り場、建物の出入り口などは踏み固められて滑りやすくなっているので、路面をよく確認すること。小さな歩幅で重心を前にし、足の裏全体で路面を踏みしめるように歩くといいそうだ。

 吹雪や地吹雪のときは、風で飛ばされた雪が建物や車などの風を遮る場所に集まって「吹きだまり」が作られる。特に車は短い時間で全体が埋もれてしまい、動けなくなることがある。マフラーの排気口が雪で詰まると、車の排ガスが逆流し、一酸化炭素を吸い込む危険がある。動けなくなったときは、車のエンジンを切るか、排気口の除雪を頻繁に行って救助を待つべきという。

 雪にまつわる注意報の1つに「着雪注意報」がある。これは、電線などに雪がこびりついて重くなり、その重みで電線が切れたり、電柱が倒れたりするなどの災害が発生する恐れがあるときに発表される。「着雪注意報」が発表されたら、夜は懐中電灯などを用意し、電気を使わずに寒さをしのぐ方法を考えておくべきだそうだ。

 今回は命に関わることが多かったので、ひたすら本書の紹介をした。「大雪」以外の7つの章でも、同様のボリュームで紹介されているので、自然災害に関心のある方はぜひ購入してほしい。特に「熱中症」に関しては、斉田氏が「毎年数百人規模の死者を出す災害は他にはない」と言い切っているので、来年の夏に向けて予習をしておいてもいいだろう。

文=いのうえゆきひろ