官能的でドキドキが止まらなくてつい勃っ……!飯テロマンガ『肉女のススメ』のおいしそうに肉を頬張る花子にみる今どきの女性像

マンガ

公開日:2016/12/14

『肉女のススメ』(小鳩ねねこ/少年画報社)

 あー……深夜に読むんじゃなかったわ……と、『肉女のススメ』(小鳩ねねこ/少年画報社)を閉じたのは、めちゃくちゃお腹が空いたからだ。しかも「軽食」ではなく、がっつりジューシーな肉を思い切り頬張りたい!! という欲求が湧いてきて大変だった。

 本作は、がっつり、こってりのお肉料理をむしゃむしゃとおいしそうに食べる「働く女性」が生き生きと描かれている、メシテロ超注意マンガである。

 デザイン事務所に勤める狼谷花子(かみやはなこ)27歳は、「食べ方がちょっと汚い」「肉ばっか食べるし」と、婚約者にフラれてしまう。それがトラウマになり、花子は「肉断ち」をして食べ方に気を付ける毎日。

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 落ち込む日々を送る中、仕事でペアを組んだのは、気の合わない年下上司、鷹木誠(たかぎまこと)。いいかげんでチャラい鷹木が、真面目な花子はちょっと苦手。一方、鷹木の方も融通の利かない花子を「苦手なタイプ」と感じている。

 ある日、残業終わりに食事をいっしょにすることになった花子は疲れていたことや「肉断ち」の反動があり、鷹木の前で思い切り肉を頬張ってしまう。

「切った傍からあふれる肉汁」「こぼす前に食べる!!」「手がとまらない~!!」

 薄く汗をかき、頬を染めて恍惚としながら勢いよくお肉を食べる花子に、鷹木の鼓動が速くなる。見てはいけないものを見ているような、変な気分になり、長年ED気味だったにも関わらず、勃ってしまうのである。動揺する鷹木に、おいしいものを食べてご満悦な花子。「苦手なタイプ」だった女性が、色々な意味で「気になるアイツ」になってしまった鷹木。これから二人の関係はどうなっていくのか!?……というのが、はじまり。

 しかし、本作は鷹木と花子の恋愛模様に主軸を置いている物語ではない。

 ヒロインは花子だけではなく、花子と同じ会社の受付嬢をしている犬塚まりあ(24)、花子たちの上司である熊代奈津美(30)の3人。彼女たちがお肉を「ばくばくっ!」と食べる様子が、痛快で、かわいくて、メシテロを仕掛けてくるのだ。

 とはいえ、本作を「本当に面白いなぁ」と感じるのは、ただ「おいしそうにメシを食っている女性が官能的に見えるから」というだけではない。
「食べ方」で婚約破棄をされた花子をはじめ、まりあ、熊代は、仕事をしながら、それぞれトラウマ、不満、悩みを抱えている。

 可愛い見た目のせいで同僚女性からやっかまれ、上司に軽くセクハラされたり、下心丸見えの男性に近づかれることに嫌気がさしているまりあは「がっつり食事」とサブカル(実はオタク)が生きがい。

 熊代は30歳になり、「自分の好きなことって何?」「本当にやりたいことって何なんだろう?」と考えつつも、答えを出せないままストイックに仕事をこなしている。その日々の鬱憤を「がっつりメシを食べる」ことで発散している。(本人たちに自覚はないのかも、だけど)。そんな3人の「食べざま」が、「私もおいしいものでも食べてがんばるか!」と、読者を明るい気持ちにさせてくれるのだ。

 12月には続刊も発売される。接点の乏しかった3人の女性が、2巻では「メシ」を通し距離を縮め、タッグを組み、さらなる「メシテロ」を誘発するマンガとなっている。様々なことに悩む「等身大の女性」がジューシーな肉を頬張るマンガは、「なんか食欲ないなぁ」とへこんでる読者の「活力」になること間違いなし! あぁ、お腹空いた!!

文=雨野裾