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絶景なのに悪臭…旅に出ないとわからないことがある!デーモン閣下インタビュー【後編】

 デーモン閣下が自身の半生と歌について大いに語る『デーモン閣下 悪魔的歌唱論』。インタヴュー【前編】では、書籍化の苦労や歌唱法に関する個悪魔的な発見について伺った。本書はタイトル通り、歌唱に関するトピックが充実しているのは当然なのだが、実は閣下の考えやアドバイスがたっぷりと詰まっている「生き方のヒント集」でもある。生き方に悩む現代人よ、閣下に教えを請うがよい!

30年間変わらぬ、閣下の主張

『デーモン閣下 悪魔的歌唱論』(デーモン閣下:監修/リットーミュージック)

 閣下は本書で“日本のダメなところ”として、「ひとつの事柄に集中して人生を賭けているのを美徳として、多くに手を出す輩を『中途半端』と表する考え方」を挙げ、「吾輩はこの思想が気に食わん」と言っている。そして「吾輩にとってフロンティア精神とは何よりも大切なものだ。ありきたりに『この分野で』と決めるよりも、そんな壁は取り払い、これからも誰も考えつかなかった角度の音楽や表現方法などを考えて行きたいと思う」と記している。

「ひとつの事柄に集中することの良さはあるとは思うが、吾輩はあんまり好きじゃない、ということは、今から約30年前に出した、この本と色もデザインもそっくりな『我は求め訴えたり』※という本でまったく同じことを書いているのだ。逆に言うと、まだ吾輩が言うということは、30年経ってもそういうことが目につくということだな。まあ吾輩のような生き方というか、どうしてそんな発言になるんだろうとか、独自の視点とか、どういう経験があったからこうなったんだろう、というヒントはこの本にいっぱいあるだろうな。参考にはなると思うぞ。」

 実は閣下、魔暦4年(2002)年に一度エンターテイナーを辞め、裏方に徹しようと考えたことがあったそうだ。そのとき、南極以外の大陸をすべてを訪れたことがあったという。

「吾輩は日本、世界問わず、行ったことのないところを見に行くのが好きで、これは“視察”と称しているのだが、時間があればなるべくそういうことに時間を使っている。旅をすると、今まで自分がその場所について抱いていた勝手なイメージが覆るものだ。物凄く景色はきれいだけど、行ってみるとすげー臭かったとか、その場に行かないとわからないことはたくさんあるものでね。その中にはいいことばかりではなくて、騙されたといったような失敗が必ずついて回るんだけれども、そういうことをしながら、じゃあこういう場面では慎重にやってみようとか、こんな人には気をつけようとか経験を積んでいくわけだ。」

 世を忍ぶ仮の姿(以下「世仮」)の若い頃から講演会などでも「旅の大切さ」について話していたという閣下だが……

「わざわざ吾輩の話を聞きに来る信者やファンなら、手頃なところから旅に出てみよ、と話していたんだが、何年か経って『閣下が昔そうおっしゃっていて、そうだなと思ったんですが、私まだ海外に一度も行ったことがなくて……』というヤツがまだいるわけだよ! 講演会とかこういう本でね、役に立つかなと思ったことを伝えて、その時はうんうんって聞いてるのに結局やってねーじゃねぇか、ってのを知るとものすごいガッカリするよね。しかしそういう輩は『言葉の不安があるし』とか言い訳ばかりするわけだ。でもそんなことはわかってんだよ、と。それがあって行くから面白いわけだし、通じなかったらどうすればいいかとか考えるわけだ。確かにね、難しいっちゃ難しいかもしれない。日常をやり過ごす、というのもひとつの生き方なのかもしれない。でも本当にやる気があったら、いろいろと整理をして、例えば1ヶ月とか、いや2週間もあればどっかまでは行けるわけでね。要はやる気の問題なんですよ、結局は。それだけ真剣に生きてないってことなんだよ。だから言い訳ばかりで何もやらないヤツは、早よ死ね!(笑)」

※『我は求め訴えたり』……魔暦前12(1987)年にネスコより出版された閣下の処女作。帯には「この本にノーベル文学賞をよこさぬようでは、人類は滅亡からまぬがれんぞ。グワッハッハッハッハッハッ」とあり、悪魔が人類に情けをかけて警告する恐怖と哄笑の福音書であり、全人類必読の世紀末をサバイバルするための本で、社会風刺やマスコミ批判など、時代を先取りした悪魔的内容であった。

できないからやらないのと、できるけどやらないは全然違う

 世姿の高校生だった頃、通学中の電車で勉強そっちのけで相撲関係の本を読み漁っていたという閣下。その他にも演劇や落語、怪獣研究など、幅広く興味を持っていたという。しかし閣下は「必ずしも将来に役に立つと思ってやっていたことではない」と言う。

「今たまたま仕事に結びついたから、結びつくものだけを思い出しているだけであって、特に役に立ってない、結びつかないものもあるはずだしな。」

 すると、同席していた編集者から「それって、スティーブ・ジョブズのスピーチで使われた“コネクティング・ザ・ドッツ”という考え方ですよね?」という言葉が飛び出した。「先を見て点をつなぐことはできない。できるのは過去を振り返って点を繋げることだけである。だから将来、その点がつながることを信じなければいけない。自分の直感や予感などを信じることが重要だ」という内容であると聞き、閣下は「点と点を結びつける……ほー、へー」と納得していた。すると「そう、“コネクティング・ザ・ドッツ”なんだよ! ハハハハ!」と高らかに笑った。

「現場でも結構あるんだよね、『いつからそれ知ってるんですか?』『いや、さっき』なんてことが(笑)。ただね、何でもかんでも生真面目にコツコツやっていこうったって、それには時間も足りないし、才能や体力にも限界があるわけで、できる範囲でやるしかないんだけれども、そこにはテクニックもあって、たまにはそういうズルさをテクニックに使うのもアリなんじゃないの、と思うわけだ。ただそればっかりに頼っていては自分のためにはならないぞ。だから“自分の誠実さ”に反しない限りはいい、ただし反則は2回まで、みたいな感じで使うがいい(笑)」

 本書でも過去の失敗や、反省から取り入れたことも包み隠さずに語っている。

「それはこの本の中の新しいことのひとつだな。昔はね、わざわざ自分が失敗したとか、プロの看板に傷がつくような発言はしなかったと思う。今回この本の取材をやってるとき、『こういう話をしても特に問題を感じないな』という自分がいた。それは年齢的な部分とかキャリアがあって、まあいろんな表現の仕方があるんだろうけど、成長したと言えるかもしれないし、老いたとも言えるかもしれない、それだけ自信がついた、という言い方もできるのかもしれないしな。」

 閣下は本書で「てめえのケツは、てめえで拭ける」のであれば好きなことをやればいい、しかし気がついていることを実践することは難しいとも記している。

「吾輩のような見た目の者が、丁寧な言葉づかいをするのは変だと思う人も多い。もっと横柄な、どこの場に行っても相手に敬語を使わないで、貴様呼ばわりする存在のように感じているのだろうな。しかしそれは丁寧な言葉づかいができないからそうしているのではなく、実はできるけど、やらないだけの話だ。できないからやらないのと、できるけどやらないは全然違うのだ。」

 さあ諸君も本書を熟読し、閣下の悪魔的歌唱法と人生を謳歌する考え方を身につけ、毎日を楽しく、いつか地獄に落ちる日まで前向きに生きてほしい。ではまた会おう……フハハハハ!

取材・構成・文=成田全(ナリタタモツ)



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