高齢者詐欺、「自分は大丈夫」の思い込みが危険! 騙されないために知っておくべき対策マニュアル

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公開日:2017/1/6

 年々高齢者の被害総額が膨れ上がっている通称「オレオレ詐欺」。これだけ有名になり、注意喚起されても被害額が増え続けるのは、手口がどんどん巧妙になっていくから。あなたの近くで被害者を出さないためにも、家庭に常備しておきたい『マンガでわかる! 高齢者詐欺対策マニュアル』が2016年12月16日(金)に発売された。

 高齢者を狙った振り込め詐欺の被害額は、「オレオレ詐欺」という言葉が知られるようになった2003年が約43億円。その後、被害額は増加を続け、2015年は約500億円に膨れ上がっている。しかも、この金額は警察に届け出のあった数字であり、被害額が10万円、20万円程度の場合、「忘れたい」「恥ずかしい」といった心理が働いて泣き寝入りしている人が多い。つまり、明らかになっている被害額は氷山の一角でしかないのだ。

 また、あまり知られていないが、被害者の苦しみはお金だけの問題では済まされない。被害にあった後は本人のプライドがズタズタに傷つく上に、家族などから不用意な行動を責められ、心身ともに追い詰められてうつ状態となったり、最悪の場合、自殺してしまうケースさえある。そして今度は遺族が苦しむ状況になるという、苦しみの連鎖も高齢者詐欺の恐ろしい点なのだ。

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 高齢者詐欺のニュースを見聞きすると、なぜそんな手口にだまされてしまうのか不思議に思う人がほとんどだろう。私たちは普段詐欺にあうことなど想定していないし、それについて対策を考えることもない。しかし、犯人たちは四六時中詐欺の手口について考え抜いている連中なのだ。

 例えば「電車の中にかばんを忘れた。駅から連絡がきたらよろしく」と息子から電話がきたあとに、実際に駅から連絡が入り、身元確認として名前や住所、会社名などを聞かれる。ここですっかり信用した被害者は、その後息子から「かばんに入っていた会社の小切手が盗まれた。これを今日中に振り込まないと会社が大変なことになる。一時立て替えてほしい」と連絡が入り、数百万を会社の同僚と名乗る人物に渡してしまう、という被害もあった。

 このケースは犯人が「親が子どもを思う気持ち」に加えて「会社に迷惑をかける」「時間に猶予がない」など、巧妙に心理的なプレッシャーを与えて被害者をパニック状態にしている。こうなると人はニュースを見ているときのような冷静な判断はできないものなのだ。「自分は大丈夫」が一番危ないと肝に銘じておこう。

 また、従来からある悪徳商法や振り込め詐欺などのほか、最近ではインターネットを利用した詐欺やオリンピック関連、仮想通貨関連など実にさまざまな手口が増えている。こうなると、詐欺行為は自分や家族の身に「いつかくる」のではなく「きっとくる」と考えていなければならない。

 有効な対策としては、少しでもあやしいと感じたらもちろん、不審な部分がなくても、とにかくお金が絡んだ時点で躊躇せず周りの人に相談することだ。信用できる第三者の判断が犯行を未然に防いでくれる。

 ここで大切なポイントは、被害者が第三者に連絡するのを防ぐために犯人側は「会社のお金を使い込んだ」「不倫相手が妊娠した」「痴漢で捕まり示談金が必要だ」など、他人に相談しにくい状況を設定してくるのを承知しておくこと。身近に相談できる人がいない場合は、#9110(シャープ9110)と電話して最寄りの警察署の相談窓口に相談することもできる。犯人がプロならば警察もプロ。高齢者詐欺に関する有益なアドバイスを提供してもらえるはずだ。

 同書の著者は、「だます手口」や「だまされる人の心理」を長年にわたって研究している心理学者。だまされないための極意を、分かりやすく紹介してくれている。巻頭にはチャートテストがあり、それに答えると、その人が特にだまされやすい詐欺のパターンが分かるようになっている。自分がどんな詐欺に騙されやすいのか、ここでチェックしておこう。

 また、詐欺の実例をストーリー仕立てのマンガで解説。警視庁の特殊詐欺対策室長の協力のもと描かれているので、巧妙な手口がリアルに伝わってくる。同書は、悲惨な詐欺の被害にあわないために知っておくべきことが満載の一冊だ。

西田公昭(にしだ・きみあき)
1960年徳島県生まれ。立正大学心理学部教授、博士(社会学)。84年関西大学社会学部卒業。91年静岡県立大学助手。94年スタンフォード大学客員研究員。2003年静岡県立大学准教授を経て現職。カルト宗教のマインド・コントロール研究や詐欺・悪徳商法の心理学研究の第一人者として新聞やテレビなどのマスメディアでも活躍。オウム真理教事件や統一教会などの多数の裁判で鑑定人および法廷証人として召還される。主な著書に『マインド・コントロールとは何か』『「信じるこころ」の科学』『だましの手口』などがある。

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