美智子さまの緊張をほぐした国民的アイドル・SMAP! SMAP解散を目前に続々登場している関連本を紹介!

芸能

公開日:2016/12/30

 2016年、最も衝撃を受けたニュースのひとつに、SMAPの解散をあげる人は多いだろう。名司会者として手腕を発揮する中居正広を中心に、雑誌『an・an』(マガジンハウス)の「抱かれたい男ランキング」のレジェンド・木村拓哉など、メンバーそれぞれが突出した才能を持ち、グループ名を冠したテレビ番組も多いため、その認知度は計り知れない。さらに、解散報道が流れた以降も、大ヒット曲「世界に一つだけの花」の購買運動や、ファンによるSMAPの存続を求める署名活動によって37万人分の署名が集まったことも記憶に新しい。デビュー25年を迎え、解散を目前に控えてもなおその人気の高さに驚かされるばかりだ。その一方で、皮肉なことに彼らの解散を機にSMAPの関連本も数多く出版されている。

平成史=SMAP史!?

 SMAPが活躍した平成を「不安にさらされた時代」と称し、彼らが社会に及ぼした影響と平成のアイドル、エンターテインメント論を展開している。SMAPといえば、デビュー曲で1位を取ることができなかった珍しいジャニーズグループとしても有名だ。この『SMAPと平成ニッポン』では、彼らが1位を逃した理由について、デビュー曲発売の週に、当時のメガヒット曲CHAGE&ASKAの「SAY YES」が1位の座についていた点をあげている。ただ、その後もチャート1位を獲得するまでに3年近くかかったことについては、もうひとつ別の原因が考えられるという。それは『ザ・ベストテン』(TBSテレビ系)や『歌のトップテン』(日本テレビ系)、『夜のヒットスタジオSUPER』(フジテレビ系)などの各テレビ局の看板音楽番組の放送が終了していたことだと指摘する。

 生放送で毎週多くの歌手が登場し、歌を披露するという伝統的スタイルの音楽番組だった。番組名の変更などはあったものの、いずれも1970年代から1980年代にかけてゴールデンタイムに放送され、当時の日本人が最新の流行歌を知る貴重な窓口になっていた。(中略)つまり音楽番組は、流行歌の最大の発信源、プロモーションの場であり、それなしには曲のヒットは覚束なかった。

 したがって、看板音楽番組の終了は、そうしたヒット曲が生まれるサイクルが失われることを意味した

 とくに、容姿や衣装、振り付けなど、視覚的アピールが重要なアイドルにとって、相次ぐ音楽番組の終了は痛手となり「アイドル冬の時代」に突入。SMAPもまた、その大きな流れにのまれたことで、苦戦を強いられたのだ。アイドルという存在そのものの過渡期を乗り越えて、今の彼らが在るといえるだろう。

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皇室でもSMAPの名が飛び出した逸話

 今年8月8日の「天皇のお気持ち表明」の6日後、SMAPの解散が決定した。同書では「平成の明仁天皇が譲位したいとの意向を表明した直後にSMAP解散が決まったことで、人々は平成の終わりがくることを意識しているだろう。そう、平成は終わるのだ」と語り、政治的事象やそのほか社会的な出来事とともに、SMAPが辿った軌跡を紹介している。さまざまなエピソードのなかには、遅咲きと呼ばれながらも頂点を極めたことがうかがえる、SMAPの象徴的な出来事も綴られている。1998年9月21日に放送された『SMAPSMAP』(フジテレビ系)と同時刻に、NHK教育テレビ(現・Eテレ)で『皇后陛下美智子さま 子供時代の読書の思い出』が放映されたときのエピソードだ。

 生放送ではないにしてもテレビで放映されるので、収録にあたり美智子皇后はかなり緊張していたという。そこで娘の紀宮清子内親王が居合わせた記者に放映日時を聞いて、月曜十時で裏番組が『SMAP SMAP』だと知ると『それじゃ、勝ち目ありませんわねぇ』と言って笑わせ、美智子皇后の気が楽になったというエピソードが伝えられている。
 この一九九八年の時点で、少なくとも、美智子皇后と清子内親王はSMAPが人気アイドルグループであることを知っていたことになる

 このエピソードが長らく伝えられているということは、皇室という場でアイドルの名前が飛び出すこと自体が珍しいのかもしれない。人気の絶頂がうかがえる一節だ。

スタッフ目線で語られるSMAPの一面、騒動の内情

 彼らと仕事をともにした番組スタッフや放送作家などの証言から見たSMAP解散騒動の真実や、25年の軌跡、メンバーひとりひとりの歴史やパーソナリティを網羅した本書。スタッフ目線でのSMAPの一面や、騒動の内情が多く語られているので、ファンにとって新たな発見もあれば、SMAPと歩んだ道を思い起こし、涙するようなエピソードもあるかもしれない。そして、最終章では「SMAPの未来」と題し、彼らの門出を予想している。

 リーダー・中居正広は、後輩のKis-My-Ft2からの派生ユニット「舞祭組」のプロデュースに成功してプロデューサー業への意欲を見せる一方で、新ドラマの視聴率が今後を左右すると目される木村拓哉。そして「経営の道」に魅力を感じていると噂の稲垣吾郎と、バイク仲間に「辞めないよ。まだまだやりたいこと、あるもん。(中略)絶対成功したいなら、成功するまで諦めずに続けるしかないからね」と語った草なぎ剛。そして「芸能界を辞めたいとか辞めたくないとかじゃなく、1度、人間関係をリセットしたいだけ」と、スタッフにこぼした香取慎吾……。

 これから袂を分かつメンバーたちが今後どのような道を選ぶのか、注目を集め続けることだけは確かだ。

 どれも“平成”という時代とともに駆け抜けた、SMAPの影響力の大きさが感じられる書籍となっている。2016年を締めくくる意味でも、一冊手にとってみてはいかがだろうか? 

文=谷口京子(清談社)