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生物界で繰り広げられる過酷なオスとメスの駆け引き…モテないオスの生存戦略とは?


『オスとメスはどちらが得か』(稲垣栄洋/祥伝社)

 「異性」という存在がなければ、もっとラクに生きられたのではないかと思うことがある。男と女という存在があるために、私たちは相当のエネルギーと時間を浪費している。それは、雌雄の区別を持つ生物にとって共通の苦悩だ。人間以外の多くの生物たちもオスの存在、メスの存在に振り回され続けているらしい。

 静岡大学農学部教授 稲垣栄洋氏の著『オスとメスはどちらが得か』(祥伝社)は、生物界で繰り広げられているオスとメスの駆け引きに迫った1冊。オスが1%しかいないギンブナ、オスからメスに性転換するクマノミ、メスに貞操帯をつけるギフチョウ、一夫多妻のオラウータンと乱婚のチンパンジー…。子孫を残すための戦略は多種多様。その熱い戦いは、どれも面白い。

 たとえば、ゾウアザラシは、1頭のオスが100頭以上のメスを従えて、ハーレムを形成して生活している。人間であれば、100人の美女に囲まれているようなもの。羨ましいと思うかもしれないが、ハーレムを作ることができるのは、ナンバーワンの実力を持つ1頭のオスだけだ。1頭のオスがメスを独占してしまうということは、残りのオスはメスとカップルになるチャンスがないということ。そのため、オスはハーレムの覇権をかけて常に戦い続けなければならない。水族館では愛嬌のあるしぐさを見せるアシカやオットセイたちも、野生ではハーレムをめぐって、血だらけになりながら激しく戦っている。ハーレムのリーダーとなったオスは心身ともに疲れ果ててか、寿命が短いというから、なんと切ないことだろう。

 だが、オスにとっては過酷だが、メスが子孫を残すという点では、ハーレムは実は優れている。ハーレムの覇権を勝ち取ったオスは、強いオスである。群れを率いる強いオスが父親となれば、その子どもは強い子どもとなる可能性が高い。ハーレムであれば、多くのメスが優れたオスの遺伝子の子を産むことがでるのである。

 では、弱いオスは、一体どうするのか。ハーレムを作ることができなかったオスたちの多くは一カ所に集まってオスだけの群れを作り、そのまま生涯を終えていく。だが、子孫を残すことを諦めずに、独自の戦略を練るものもいる。たとえば、オスとは思えないほど、身体の小さなオスは、メスのふりをしてハーレムに忍び込み、そうして、ちゃっかりと子孫を残してしまう。メスも騙されているわけではなく、もしかしたら、このような知恵のあるオスを選んでいるのかもしれない。

 カブトムシにも、小さな身体のオスがいる。不思議なことにカブトムシのオスは大きな個体と小さな個体が多く、中間的な個体が少ない。カブトムシのオスはエサ場やメスをめぐり、激しく戦い合うものだが、小さなオスは最初から大きなオスとは戦わないことで戦いに勝利する。カブトムシのオスは明け方近くに活動するのだが、小さなオスは、なんと真夜中のうちから活動を開始するのだという。そして、まだ他のオスが眠っているうちに、エサもメスも手に入れているのだ。

 男は力が強ければいいというわけでもない。強い者が生き残るのではなく、生き残ったものが強いのだ。子孫を残すための戦略はどれも面白い。そして、モテる者だけが生き残るわけではないことに、何だか考えさせられてしまう。勇気をもらったような気になる。異性の存在に悩まされ続けているすべての人にぜひとも読んでほしい1冊。

文=アサトーミナミ



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