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世界の3人に1人がイスラム教徒に?! 「イスラム教」を知るために読んでほしい「わかりやすく、実践的で、役に立つイスラムの入門書」


『となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代』(内藤正典/ミシマ社)

 世界各国でテロを起こし、日本もその対象だと公言している「イスラム国」のせいで、日本人のイスラム教徒に対する印象はあんまり、よくない。むしろ「なんか怖い」「関わりたくない」と思っている人の方が多いのではないだろうか。

 しかし世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代も遠くないという。さらに東京オリンピックも控えており、多くのイスラム教徒が日本にやってくることも考えられる現在、イスラム教に対する「間違った知識」や「偏見」は、あなた自身をマイナスの状況に陥らせることがあるやもしれない。

 では、どうやったら「イスラム」のことを知ることができるのか。また、興味はあるけれど難しくて断念してしまった方へ、おススメしたい一冊がある。

『となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代』(内藤正典/ミシマ社)は、「これまででもっともわかりやすく、実践的で、役に立つイスラムの入門書」だ。

 著者は社会学博士であり、現代イスラム地域について研究している権威ある専門家。だが、本書は学者然と学問的な難しいことを、机上の空論として語っているという内容ではない。著者は実際にイスラム地域に足を運び、「現地の声」を聞いた上で、限りなく客観的な「感想」を交えつつ、イスラムについて教えてくれている。

 長年イスラム教徒の社会を研究した結果、著者は「(イスラム教に)暴力性がないとは言えません。女性の人権抑圧の問題がないとも言えません」と語る。さらに「近代以降の西欧世界で生まれた価値の体系とは、ある種、根底から違っている」そうだ。

 しかしだからと言って、「理解できない相手」と毛嫌いするのではなく、近い将来、3人に1人がイスラム教徒になると言われている時代を迎えるにあたり「共存を図る」方が、「はるかに恩恵が生まれる」未来だと考えている。また、違う価値観だからこそ、イスラム教から学べることもあるという。

 イスラム世界と西欧文化が、基本的には「水と油」であるという前提のもとに、どうすればこれ以上テロや戦争によって人の命が奪われない世界にできるのか。どのような知恵が必要かを考える一助になってほしいというのが、本書の大きな目的である。

 著者の実体験も交えつつ語られている本書は、「なぜ、イスラム国が生まれたのか」、「イスラム世界と西欧社会の対立の発端は?」など、現在起こっている戦争やテロの原因となっている歴史の説明から、イスラム教という「宗教」の話、教徒という「人物」について、日本人が気になっている「疑問」そして「戦争やテロが起きないために、私たちができること」といった「共存するための方法」まで、幅広く詰め込まれている。

 例えば、ニュースでも耳にする「モスク」。これをキリスト教における教会と同じだと思っている人も多いのではないだろうか。実際は「全く同じ」ではないそうだ。教会にはたいてい信者がくっついている(日本のお寺も同じく、檀家さんがいる)。要は「所属している」形に近いわけだが、イスラム教ではその感覚はないらしい。モスクは単なる「礼拝場所」。ただ礼拝ができればいいので、地域の人しかお祈りできないこともないし、特定の人間しか入れないわけでもない。

 また、イスラム教の「悪の象徴」のようにとらえられているヴェール。女性が顔や髪の毛を隠しているあの風俗は、日本人にとっては奇異に見えるし、「女性だけそうしなきゃいけないなんて信じられない! かわいそう!! 女性差別よ!!」と思っている人もいるはず。

 そもそも、スカーフやヴェールは「夫や家族以外の異性の視線をさえぎるため」に身に着けているもの。イスラム教徒の女性は「強制されて」いるわけではなく、見せることを「恥ずかしい」と感じているのだ。日本人でも、ミニスカートを穿いて太ももを出すのがイヤという人もいるだろう。羞恥を感じるという点は一緒。ただ、「そこまでは他人に見せない」というラインが異なるだけなのだ。これを「女性差別」だと決めつけるのは、相手の価値観を全く無視してしまっている。西欧では女性はみんな膝上20センチの超ミニスカを穿くのが常識だから、日本人も同じようにしなさいと言われたら、「ちょっと待ってよ」と思う方も出てくるだろう。「ヴェールを被るな」という押し付けは、その感覚と一緒なのだ。

 などなど、イスラム世界に関する情報がこの一冊には詰まっている。身近な隣人のように、イスラム教徒を感じられるようになることは、決してあなたの損にはならないだろう。

文=雨野裾



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