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時代の先を読むコツとは!? 「ガイアの夜明け」敏腕プロデューサーから学ぶ“先読み力”


『「兆し」をとらえる 報道プロデューサーの先読み力(角川新書)』(野口雄史/KADOKAWA)

 これから何が流行るのかがわかったら、大成功の人生が送れるに違いない。「見えない時代の先を読む。」という帯の文句が目を引く、『「兆し」をとらえる』(野口雄史/KADOKAWA)は、「ガイアの夜明け」のプロデューサーが時代の波のとらえ方を書いた本だ。

「ガイアの夜明け」は、2002年からテレビ東京系列で放送が始まり、今日に至るドキュメンタリー番組。番組名に「日経スペシャル」の冠がつくとおり、番組のテーマは経済だ。これまでに、「世界遺産の功罪(世界遺産登録が決まる前から平泉を取材)」「日の丸スポーツカー 復活(日産GT-Rの開発を追う)」など、多くの回が話題になった。

 著者は本書の中で、〈「なぜ先が見えない話なのに、重要だと思うのか?」という問いに、「勘です」としか答えられないのなら、仕事ではありません〉と述べる。「兆し」をとらえる方法、つまりは先読み力。これは、一体どのようなものなのか。私たちにも真似はできるのだろうか。読み解いたポイントを2つ紹介しよう。

■具体的な動きを追う(無名な人が主人公)

 著者の先読み力は、番組の特徴に表れている。それは、えらい人ではなく、ふつうの人が出てくる番組であること。政府の方針や有識者会議の結果といった言葉やデータだけを取り上げるのではなく、具体的な生の現場を取材する。いわば、無名な人が主人公。実際に現場で動いている一般人を追いかけるのだ。

■共感を呼ぶ(我がこととして感じさせる)

 視聴者は、「経済」という一語でくくられる抽象理論を並べられるより、具体的な仕事を見せられる方が、番組に対して共感を抱きやすい。視聴者が、番組制作側と同じ土台に立って、我がこととして目の前の問題に向き合う。すると、作り手のメッセージが伝わりやすくなるという。

 2つのポイントが強く働いて話題となった回を、ひとつ記しておこう。2012年放送の「働くママが日本を変える!」、大阪の一主婦が仕事に就くまでを取材した回だ。主人公は、夫婦でうどん店を経営していたが、不景気で店をたたんだ女性。閉店後、夫は再就職をしたが、給料が安くて生活がままならない。そこで、妻も職を得ようと、子連れでハローワークを訪れる。そこに、番組スタッフが偶然居合わせ、その場で声を掛けて取材許可を取ったのだという。話を聞くと、応募して落ちた回数はもう33回。今度はUSJの採用試験を受けるという。小学生の娘は「もう貧乏は嫌だ。お母さんには受かって欲しい」と涙を流す。主婦の再就職のリアルを伝えるとともに、観ている側まで採用結果の合否に緊張する回となった。結果、女性はアルバイトとして採用が決まるというエンディングだったのには、ホッとさせられた。

 まるで自分が職探しをしているような気持ちになれば、そこに横たわる問題点や、次に人が起こすであろう行動が予測しやすい。確かに先読み力だ。観ているだけでも力がつきそうだが、この例では、視聴者を引き込もうとした取材側がより一歩先に進んでいる。なお、どんな人を取材対象とするかは、日本社会が抱える問題点や、企業の新商品開発から絞り込んでいくことが多いようだ。

 著者は、新聞数紙をじっくり読み、気になった記事は切り取ってファイリング。毎日、「ここから何が撮れそうか」を考えながら読むのだという。「何が」とは、その記事の背景、隠れた問題点、普遍性、どんなメッセージを込められるかなど。特にいつの回でも土台としたいメッセージは、無名だけど素晴らしい人がたくさんいる、働くことって悪くない、だそうだ。

 世の流行をとらえなければ、と構えると肩がこるが、目の前の人にちょっとシンクロしてみる、くらいの軽いアンテナからためしてみたい。

文=奥みんす



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