たった2分でベストセラー『HARD THINGS』を読破! 会社でバカにされないために。ピンチを切り抜く”4つのアドバイス”

ビジネス

更新日:2022/1/25

 本を読む時間がない日々忙しい人のために、ロングセラー、ベストセラー、話題の本etc…ダ・ヴィンチニュース独自の視点で選書した名著を紹介! 第1回は、数々のビジネス書大賞を受賞した『ハード・シングス 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか』です!

 

 本書『ハード・シングス 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか』(ベン・ホロウィッツ:著、小澤隆生:その他、滑川海彦、高橋信夫:訳/日経BP社)は「創業CEO」の職にある人向けの問題解決法が主であるが、リーダーや管理職の参考になる部分も多く、マネジメントに悩む人への福音書ともなる。ベンチャーキャピタリストであるベン・ホロウィッツが、起業したIT企業を成長させ、ピンチを切り抜けて会社を売却するまでの経験から得られた「CEOはいかに行動し、困難(ハード・シングス)に対処すべきか」を伝授する内容だ。

『ハード・シングス 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか』

【新しさ】★★★★☆(パートナーの急な裏切りなど、理想だけでない経営の最前線が生々しく描写される)
【実用性】★★★☆☆(CEOに特化しているため、立場ごとの読み解きが必要)
【納得度】★★★★☆(実体験からの教訓に納得。応用範囲は広い)
【オリジナリティ】★★★★★(創業CEOでありベンチャーキャピタリストである著者の助言は貴重!)
【わかりやすさ】★★☆☆☆(少々文章が硬く慣れが必要だが、部下への接し方に悩む人は必読)

 

①「ハード・シングス」に決まった対処法はない!

 経営の自己啓発書は対処法を教えるところに問題があると指摘。「ハード・シングス」に決まった対処法はないが、共通したパターンはあり、ホロウィッツがこれまでに得た教訓とその教訓を得るまでに至った事情、窮地に陥った際に逃げたり吐いたりしないための知識が具体例とともにまとめられる。

 

②良い手がないときこそ集中、最善の手を打つ

 成功するCEOの秘訣はないが、良い手がないときに集中し最善の手を打つ能力があれば困難を打開できるCEOになれる。自分一人で背負わずに分けられる重荷は社員と分け合う、もうダメだと思わずに明日まで生き延びれば答えが見つかる可能性はある、困難な状況はすべて自分の責任と認識して次の手を考える――そのためには解雇や降格も必要だ。どの会社にも命がけで戦わねばならないときがある。

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③「人」「製品」「利益」の順で大事にする

 人を大切にするのは「自分の会社を働きやすい場所にする」ためであり、そうできなければ「製品」と「利益」は意味を持たない。会社は全員が同じ考えを持ち、全員が常に改善していればうまく回っていく。そのためには(一見無駄に思えるかもしれないが)教育プログラムの実施が重要となる。また会社が成長し人が増えると正しい方針も変化するため、事業継続には社内政治を最小限に抑え、採用や昇進に注意を払う。そのためには社員のパフォーマンスを評価してフィードバックを与える。これはCEOにとって必須の仕事だ。

 

④決断する勇気は努力で発達する

 CEOに必要とされる唯一の資質はリーダーシップであり、「ビジョンをいきいきと描写できる能力」「正しい野心」「ビジョンを現実化する能力」の3つが重要である。また時には社員を罵り、怒らせるといった「不自然な行動」も必要だ。また決断には勇気が必要で、困難だが正しい決断(それには独自の情報と知識が必要)は勇気となり、逆に多数決などの安易で間違った判断は臆病にさせてしまうものとなる。

 

 ホロウィッツは最後に「苦闘を愛せ」「自分の独特の性格を愛せ。生い立ちを愛せ。直感を愛せ。成功の鍵はそこにしかない」「幸多かれ、夢の実現あれ」とエールを送り、叱咤激励する。苦難を乗り越えた者だけが成功を手にすることができるのだ。

 

【まとめ】ホロウィッツによると、アップルの創業者スティーブ・ジョブズは「ビジョンをいきいきと描写できる能力」が高いそうだ。時に苛烈なまでに人を追い詰めることで新しい製品を生み出し、倒産の危機を回避できたのは「ビジョン」を社員に信じさせることが出来たからだ。また自由な社風で話題になることが多いグーグルの前CEOエリック・シュミットは、会社が成長する「平時のCEO」として力を発揮し社員から様々な創造性を引き出したが、現CEOのラリー・ペイジは競争にさらされる「戦時のCEO」として選択と集中を行っている。こうした本書の内容をすべての働く人が理解することで、プレッシャーに負けずに困難な問題を解決し、新しいアイデアを生み出す労働環境が生まれる――閉塞した社会が必要としている働き方のヒントは、ここにあるのだろうと思わされた。

 

文=圧縮小太郎(あっしゅくしょうたろう)