安い!うまい!ヘルシー! アスリート系シェフが教える、鶏むね肉レシピ

食・料理

公開日:2017/1/15

『アスリートシェフのチキンブレストレシピ――鶏胸肉でパワーアップ!』(荻野伸也/柴田書店)

 高タンパク低脂質の鶏むね肉やササミは、ダイエット中の人でも安心して食べられる食材の1つ。しかも特にむね肉はなんといっても価格が安い。まさに、ダイエットによし、家計節約にもよし、のお肉界の優等生なのだ。さらに最近では、イミダゾールジペプチドという疲労回復に効果的な成分が含まれていることが判明し、にわかに注目を浴びている食材でもある。

 その反面、むね肉は、モモ肉よりもパサパサしていて苦手、ジューシーさが足りない、など、文句を言われがちな部位なのも事実。むね肉やササミは脂がない分、火を通すと硬くもっさりとした食感になってしまいがちだ。しかし実はそれは、大きな誤りである。悪いのは鶏むね肉ではない。我々の調理法がたぶん根本的に間違っていたのだ。

 それに気づかせてくれた一冊が『アスリートシェフのチキンブレストレシピ――鶏胸肉でパワーアップ!』(荻野伸也/柴田書店)である。著者は肉料理には定評のある、一流のフレンチシェフ。

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フランス料理において、鶏肉はモモ肉よりもむね肉の方がおいしいとされ、最高の~、至高の~、などの意味を持つ“シュープレーム”と言われています。

 安くてヘルシーで、しかもおいしい。そんな素晴らしい鶏むね肉の可能性を感じさせるレシピが、本書には続々と登場する。著者はトライアスロンやトレイルランニングを愛するアスリートでもあり、タンパク質をたくさんとれる鶏むね肉料理はお手の物。カラダづくりのために、日頃からよく食べているそう。本職のフレンチに限らず、和食や中華、エスニックまで、バリエーション豊かなレシピを持っている。作り置き可能なレシピもあり、忙しい人でもトライしやすい。

 切り方を変える、調味料につけこむ、火入れに気をつける……これらのちょっとしたコツを守るだけで、鶏むね肉やササミは劇的に美味しくなる。実際本書の手順に従い、皮なしの鶏むね肉でチキンソテーを作った私は、そのしっとりとした仕上がりに感動した。脂じゅうじゅうは、おいしい肉の必須条件ではないのだ。

 パスタの代わりにチキンを使ったカルボナーラや、ささみのチリソース炒めも美味しくいただいた。今は、フライドチキンやつくね、チキンストロガノフなど、他のレシピに挑戦するのが本当に楽しみだ。

 さらに本書が素晴らしいのは、ただのレシピ本としてだけでなくダイエット向けレシピとしても使える点だ。管理栄養士も執筆に携わっていることもあり、1人前あたりのカロリーや糖質量もレシピごとに記載がある。タンパク質量も載っているので、筋トレ中の人にも役立つだろう。糖質制限中の人に向けて「ご飯をカリフラワーやブロッコリーに置き換えてもいい」といったアドバイスもあり、いわゆる糖質オフレシピとして使えるようになっているのもいい。

 ヘルシーな素材を、ヘルシー一辺倒に走らず、あくまで美味しさ最優先で調理しているのが本書の最大の魅力だ。男性シェフの書いたレシピ本ゆえか、がっつり系のメニューも多く、肉肉しい男子がいる家庭でも安心して振る舞えるのもよい。

 安い、ヘルシー、パサパサ、というこれまでの鶏胸肉やササミのイメージを覆す、素敵なレシピを集めた本書。鶏むね肉やササミを美味しく、飽きずに食べたいあなたにおすすめしたい。

文=遠野莉子