男らしい男、女らしい女じゃなきゃ、社会に居場所はない!? モテる根本的な理由とは?

社会

公開日:2017/1/21


『モテる構造 男と女の社会学』(山田昌弘/筑摩書房)

 あなたのまわりにいるモテる人とはどんな人だろうか? 仕事ができる、容姿端麗、スポーツが得意、気が利く、優しい、愛想がいい、などいろいろな要素があるが、性別によって求められるものが違うことにはお気づきだろう。男性は、仕事やスポーツができる方がモテるだろうが、女性の場合、仕事などの能力よりも、気が利くだとか愛想がいいとか美人であるほうが確実にモテる。

 このように、モテることに関して男女は同じでない。当たり前だ。ではどうしてこの違いは起こるのか。そこに焦点を当て考察したのが本書『モテる構造 男と女の社会学』(山田昌弘/筑摩書房)である。

 一般に男らしい男、女らしい女が好まれるが、そもそも男らしさ、女らしさとは何だろう。なぜ男性は男らしくありたいと思い、女性は女らしくするのか。それは必要なのか? 女らしくすることを嫌う女性もいるが、彼女たちだって男性として見られたいわけではなく、もし男と間違えられたなら怒るか落ち込むかするだろう。

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 それは自分が男か、女かという確信、つまり「性アインデンティティ(性自認)」が、社会生活を送るのにもっとも必要な確信だからだ。なぜなら社会は、性別による区別が基本にある。「男性」「女性」のカテゴリーがあり、そのどちらかでなければ社会に受け入れられない。

 本書でキーワードとなる‘アイデンティティ’とは、「社会の中に自分の居場所がある」という感覚、また「自分が必要とされ、大切にされている」という感覚のこと。アイデンティティ・クライシスの典型的症状は、「自分は何者かわからない、どこにも居場所がない」と感じることである。

 前近代社会(伝統社会)では、宗教や地域社会、親族組織が、アイデンティティ感覚を供給していた。原則として、自分の生まれによって一生が決まっている社会である。そのような状況では「自分が何であるか」という悩みが生じる余地はなかった。だが、現代は、「自分探し」への関心が高いように、自分で自分のアイデンティティを作り上げることが人生の課題となる社会。職業や結婚相手が自由に選択できる反面、仕事や結婚に失敗して自分が大切にされない可能性があるのだ。

 社会が自分を必要としてくれているという感覚を満たすため、男として好かれること、女として好かれることは、他のアイデンティティより優先的に確認される。なぜなら性アイデンティティは、男と女で、社会的に異なって構成されているからだ。

 そして、男らしい男、女らしい女が好まれるのは「感情」であって本能ではない。感情とは個人的なものだが、多数の人が共通に感じる感情は、社会の影響を受けて形成されるものである。本書では、このような感情が生まれる社会的・心理的背景や、男女の生き難さの基本構造、女らしさよりも男らしさの方が得にくい理由などについて展開されていく。

 今や社会的権利において男女の差はほとんどないが、性別によって「生き難さ」に質的違いがある。本書はそれを解決する方法を示すものではないが、「生き難さ」を感じている人にとって、理由としくみを知ることはきっと助けになる。蛇足だが、モテテクの伝授はないもののモテる根本的理由がわかるので、婚活にお悩みの方にも意外とお役に立つのではないかと思う。

文=高橋輝実