NASAが認めなくともムー編集部が認めているから問題ナシ?!超常現象研究の第一人者が語りつくす「月の都市伝説」が凄すぎる!

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公開日:2017/1/27


『月の都市伝説』(並木伸一郎/学研プラス)

 暗い夜空に大きく輝き、古来より人々を魅了してきた月だが、実際には荒涼とした大地があるだけ。それでも人々は月へロマンを求めて止まず、兄弟で月面探査を成し遂げるために挑み続ける漫画『宇宙兄弟』も大人気だ。しかし、今回見つけたこの一冊は全く違う角度から月へのロマンを語っている。それが『月の都市伝説』(並木伸一郎/学研プラス)だ。

 本書は各国の研究者が独自の見解を唱えたり、アマチュア天文家が撮影したりした、いわゆるUFO写真などを一挙に集めたものである。いずれも「米国航空宇宙局(NASA)」からは認定されていない仮説ばかりであり、小生もこの手の話題には踊らされないよう普段から気をつけているつもり──なのだが、しかし本心ではとても惹かれてしまう。昭和の男子なら、テレビでUFO特集に釘付けになった覚えはないだろうか? あの頃のワクワクした感覚を現代の視点で蘇らせてくれるのが本書の魅力なのだ。

 では、本書がただ荒唐無稽なUFO譚を集めたものかと問われれば、さにあらず。冒頭で取り上げられている「月の起源の謎」では、現在までに考えられている月の起源4種を科学的に説明している。宇宙の塵が集まり地球が作られるとともに月ができたとする「兄弟説」に、地球誕生直後、その自転が今よりも高速だったために、遠心力で一部がちぎれ飛んだとする「親子説」。また、地球近くを通過した小天体が重力に捕らわれたとする「他人説」。そして現在もっとも有力視されているのが「巨大衝突(ジャイアント・インパクト)説」だ。

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 それは原始地球に火星サイズの小天体が衝突し、地球や小天体の破片が集まって月となったとする説だ。これなら月の化学組成が地球のマントル部分と似ていることや、平均密度が地球に比べて低いなどの特徴を説明できるという。だが、そこで並木氏はこんな疑問を呈している。「破片は、土星の環や小惑星帯のようになる可能性のほうが高いだろう」と。

「なるほど興味深い」と思い「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」公式サイトで巨大衝突説の解説を読むと、コンピューターでシミュレーションすれば「実際に月のような衛星が作られる」と書かれており、あっさり疑問は解決。衝突時の破片では環にならないようだ。なお、土星の環は「衛星や捕獲した彗星などが土星に近づきすぎて、潮汐力によって粉々になった」と考えられている。

 その後は、UFO研究本でもお馴染みのイマイチ不鮮明な写真やイメージ画像が盛りだくさんで、昭和のUFOブームを知る者には、むしろ懐かしさも感じさせる。しかし、意外にも都市伝説を真っ向から否定する項目もある。2000年代初頭に話題となったアポロ11号が月へ行っていないとする「アポロ計画陰謀論」を、本書ではNASAの発表をもとに完全否定している。

 その陰謀論の骨子は大まかに3つ。「(1)ヴァン・アレン帯通過の際に浴びる大量の放射線を防げたのか?」「(2)月面で星条旗がはためく画像もありスタジオ内で撮影されたのでは?」「(3)着陸船が飛び立った『噴射痕』が無い」。それを根拠に月面着陸を疑問視する声は後を絶たない。

 だが実際には、(1)は短時間で突破したために当時の宇宙服でも十分に防げたし、(2)は星条旗の上辺に芯材を通して水平にしており、撮影時にしわを伸ばさなかっただけ。(3)も2008年に日本の月周回衛星「かぐや」が、翌2009年にはNASAの「ルナ・リコネイサンス・オービター」が着陸船の痕跡を撮影している。

 とはいえ、この陰謀論は否定しておかないと「本書で紹介されるアポロ11号が持ち帰った写真や月の石などの資料まで存在を否定されて、話が成り立たなくなるからでは?」と、思うのは邪推のしすぎか。ともあれ、月は身近でありながらまだまだ謎の多い天体だけに、人々の想像力を刺激するのだろう。月面に浮かぶUFO、小生も見られるものなら見てみたい。

文=犬山しんのすけ