ちょっぴりダークな『ズートピア』!?  漫画『BEASTARS』から目が離せない理由とは?

マンガ

公開日:2017/2/1

『BEASTARS』(板垣巴留/秋田書店)

 ヒト科以外の動物たちが、二足歩行しながら服を着て人間と同じように生活していたら……という想像に胸を膨らませた経験はありませんか? 古くは、鳥獣戯画や手塚治虫先生のマンガにも幾度となく人間的な特徴を持つキャラクターが登場しました。昨年『新潮』(新潮社)で公開された手塚治虫先生直筆のラクガキに、なにやら女体を連想させるエロティックな動物が描かれており、いろいろな意味で話題になりましたよね。

 昨年公開された大ヒットディズニー映画『ズートピア』でも、ウサギの警察官やキツネの詐欺師、ガゼルの歌姫など、大小さまざまな動物たちが人間と同じように生活し、その圧倒的かつ魅力的な世界が印象的でした。

 先日、第1巻が発売された『週刊少年チャンピオン』で連載中の『BEASTARS』(板垣巴留/秋田書店)もまた、ロマンあふれるアニマルマンガです。舞台は肉食動物と草食動物がともに生活する全寮制の学校・チェリートン学園。さまざまな動物たちが学校生活を送るほんわか学園モノかと思いきや、物語のはじまりは、オスアルパカのテムが、何者かに殺されるシーン。この世界では肉を食べることそのものが重罪となるため、テムの事件は学校中に衝撃を与えました。

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 表面上はともに生活をしている草食動物と肉食動物ですが、内に秘めた本能を隠しているようです。窮地に追い込まれた草食動物が「普段は友達の振りしてお腹が減ったらエサ…? なめないでよ」なんて、セリフを吐くことも。

 殺伐とした世界観と動物たちのイキイキとした表情に、どんどん惹きこまれていく本作ですが、なかでも目が離せないのが主人公のレゴシくん(17歳)! レゴシは身長185cm、体重71kg、爪6cm、アゴの力300kgのハイイロオオカミです。とても繊細な彼は、大きな体を隠すように背中を丸め、目立つことや争いごとが苦手。彼にケンカを仕掛けてきたキツネに対して、わざと負けようとするほどの平和主義者なのです。

 体格や力など、生まれ持った才能を生かそうとせず、感情を上手に表わすことができないレゴシ。その不器用さに胸キュンしてしまう女性もいるはず。そう、私です。もはや、レゴシのサスペンダー姿さえ愛しい。

 そんな虫も殺せないレゴシくんですが、ある夜に出会ったドワーフ種のメスウサギ・ハルに対して捕食者の本能をむき出しにしてしまい、ケガを負わせてしまいます。この一件で、これまで17年間抑えてきた肉食動物としての自分に気がついた彼は、深く絶望します。自分の知らない自分との出会いは、いいことだけとは限らないのかもしれません。思春期に悩みはつきものですが、果たしてレゴシのお悩みは解決するのでしょうか。

 青春ケモノ譚『BEASTARS』。生き方が不器用な男子がお好きな方、必読です。

文=不動明子(清談社)