女子野球×タイムスリップ!?異色のスポーツマンガ『なでしこナイン』は、史実を元にした傑作!

マンガ

更新日:2017/2/1

 2010年に開幕した「女子プロ野球リーグ」。現在は京都フローラ、埼玉アストライア、兵庫ディオーネ、レイアの4チーム体制で運営され、女子プロ野球の魅力を広めるために活動している。また、女子野球日本代表ナショナルチームは「マドンナジャパン」の愛称でも知られているため、存在を耳にしたことがある人は多いはず。しかし、そんな女子プロ野球が、実は過去に一度開幕されていたことを知っている人は少ないのではないだろうか。

 日本の女子プロ野球の歴史は古い。昭和25年に開幕され、最盛期には全国で約25チームが存在したという。しかし、昭和46年には自然消滅。以降、今日に至るまで、女子プロ野球というものの存在にスポットライトが当たる機会はなかなか訪れなかった。

 そんな史実を元にした異色の青春マンガがある。『なでしこナイン』(東元/主婦の友社)だ。本作は野球に打ち込む女子高生・球子を主人公にした野球マンガ。しかし、ただのスポ根マンガでは終わらない。本作に効いているのは、「タイムスリップ」というSF要素である。

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 ある日、朝練に向かう途中、神社の大階段の上から転げ落ちてしまう球子。気がつけば、周囲の風景が異様なほどのどかになっている。ここはどこ――?そう、球子は階段から落ちてしまった衝撃で、昭和にタイムスリップしてしまうのだ。

 このままどうやって暮せばいいのか。そして、好きな野球を続けるにはどうすればいいのか……。しかし、悲嘆に暮れるのも束の間、球子は元来の明るさを持って昭和の時代に馴染んでしまう。そして、偶然の出会いから知り合った女子たちと女子プロ野球チームの結成を目指すことになる。これが、昭和25年の女子プロ野球開幕につながるのである。

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 本作の魅力はなんといっても、球子のキャラクターにある。逆境にもめげず、周囲を巻き込み、野球の道をひたすら突き進む。その実直さは読んでいて気持ちがいいほど。そんな彼女がひとり、またひとりと仲間を作っていくさまは、まごうことなき青春ストーリーだろう。

 また、そんな球子の運命に大きく絡んでくるのが、名キャッチャーとして名を馳せていた祖母の存在。現代ではすでに亡くなっている祖母とタイムスリップした先で出会うことになり、そこからドラマが生まれるのだ。2月1日(水)に発売されたばかりの第1巻では、球子が祖母の存在に気づき、やがてその運命を案ずるところまでが描かれる。「あたし…イヤなことを思い出した…」。球子のこの独白からは、女子プロ野球開幕までの道のりが決して平坦ではないこと、そして祖母の身になにかが起きることが読み取れるだろう。はたして、球子の野球人生はどうなってしまうのか――。

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 女子野球×タイムスリップという異色の要素をかけ合わせたことで、スポーツマンガが苦手な人でも気軽に楽しめる内容になっている本作。タイムスリップものには外せない、「いつか訪れる別れ」の予感に胸を締め付けられながらも、球子たち昭和女子の奮闘ぶりを追いかけてみてほしい。

文=五十嵐 大