ブタへの愛が国境を越えた!? 漫画家・松本救助のコミックエッセイ『ブタが好きすぎてハンガリーの国賓になりました』刊行記念イベント開催!

コミックエッセイ

更新日:2017/2/3

 ブタ好きが高じて、ハンガリーに国賓として迎えられるまでの実話を綴った松本救助(きゅうじょ)・著『ブタが好きすぎてハンガリーの国賓になりました』(ポプラ社)が発売され、刊行記念イベントが1月24日(火)、東京港区・ハンガリー大使館にて開催された。

『ブタが好きすぎてハンガリーの国賓になりました』(ポプラ社)

 館内には、ハンガリーの民族衣装や装飾品とともに、国宝と呼ばれる「マンガリッツァ豚」のレプリカとぬいぐるみがお出迎え。まるで羊のようなモフモフ姿に、ブタ好きでなくても思わず感嘆の声を上げてしまうほど。ブタをこよなく愛する著者なら、なおさら心ときめいたに違いない。なぜなら、ブタへの愛が高じてブタが主人公の漫画を描いてしまったからだ。それにしても、ブタの漫画でなぜ国賓に?? そんな疑問を抱きながら、ハンガリー大使館・パラノビチ大使と松本氏のトークイベントは始まった。

 本コミックは、マンガリッツァ豚のWEB漫画をきっかけに、ハンガリーの食肉加工品会社・ピック社から著者の松本氏へ直接連絡が入るところから始まる。その時の様子を松本氏は、「ただただ、怒られるかと思った」と笑みをこぼして振り返った。

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「国賓というと首相や大統領みたいな『国を代表する人』が招かれるイメージなのに、どうして私が国賓?って……。普通に招待してもらえたら十分なのに(松本)」

パラノビチ大使によると、マンガリッツァ豚は、ハンガリー原産の希少な豚で、一時絶滅危機に陥った際、マンガリッツァ飼育業者連盟のトート会長によって管理・保護され、厳しい飼育管理体制のもと、現在では5万頭にまで復活。しかし、今でもその希少性から、ハンガリーが誇る「国宝」に指定されている。ちなみに、パラノビチ大使曰く、「幼少の頃は、マンガリッツァ豚を動物園で見た」というから、その発言からもマンガリッツァ豚の希少性が伺える。

 VIPとして招かれた松本氏の待遇は、文字通りの国賓級! 空港で待ち構える報道陣の囲み取材をはじめ、人気朝番組への出演、オルバーン・ヴィクトル首相(イケメン、しかも紳士)との会食、トート会長らと記者会見などなど、字面だけ追うと、一国の長のようなハードスケジュールだが、紛れもなく、彼女はただブタを愛する一人の女性漫画家なのだ。

 それにしても、いくらハンガリーの国宝・マンガリッツァ豚を漫画にしたからといって、なぜ松本氏の作品がこれほどまでにハンガリーの人たちの心を動かしたのか――? その真意を探るべく、まずは、松本氏本人にコミックへの想いを尋ねてみた。すると…。

「アシスタント時代、お世話になった師匠から『好きなものを素直に表現すると、それは縁に繋がっていく。好きを突き詰めていくと、思いがけない出会いになる』と教えてもらって…。実際、師匠もたくさんのご縁に恵まれている人でした。今回、このコミックを出版させていただくにあたって、読んでくださる方にそんなメッセージを伝えられたらいいなと思っているんです」

 世間では、好きなものを主張しすぎると、オタク扱いされたり、周りの人との温度差で冷たい視線を浴びたりする。特に日本は、他人の目を気にするため、周りから浮かないように自分の感情を抑えがちだ。しかし、松本氏は自分の気持ちを偽ることなく、漫画という表現方法で自分の愛情を自由に楽しく形にする。きっと、その熱意が国や言葉の垣根を越えて、ハンガリーの人たちに伝わったのだろう。

 イベント後の試食会では、ワインに数々のマンガリッツァ料理、ハンガリーを代表するデザート・ショムローイ・ガルシェカが振舞われた。100グラム数千円するといわれる生ハムは、まろやかな塩気の中にやさしい甘みがあり、サラミに至っては、噛むと脂が口の中に広がって、その美味しさに深く頷いてしまうほどだ。初めて味わう貴重な料理に参加者が賑わう。

 しかし、今回のイベントのメインディッシュは、間違いなく松本氏のコメントだろう。言葉数こそ少ないけれど、作品や読者に対する松本氏の想いは、愛情に溢れて温かい。作品を通して、きっと素敵な出会いは誰にでも起こりうることを伝えたかったに違いない。

 本作はあくまでコミックエッセイである。気軽に読めるし、エンターテイメント性も強い。しかし、だからこそ、好きなものは好きだと表現することの大切さがダイレクトに伝わってくる。そう、この物語は、自分の好きなものを表現したら、思いがけない素敵な縁に恵まれた、現代版おとぎ話のような本当の話なのである。

『ブタが好きすぎてハンガリーの国賓になりました』(ポプラ社)絶賛発売中!
定価:本体1,200円(税別)

文=金本真季