異世界にオープンした日本の居酒屋が舞台の、グルメ系ファンタジー『異世界居酒屋のぶ』アニメ化企画も進行中!

マンガ

公開日:2017/2/9


『異世界居酒屋のぶ』(ヴァージニア二等兵:著、転:キャラクター原案、蝉川夏哉:原作/KADOKAWA)

 初めて入る店というのは、期待と不安が入り混じるもの。でも、もしそこで感動的に美味しい料理に出会えたら、「美味しいお店を見つけた」という喜びも相まって、きっとその店の虜になってしまう。それはどこの国の人でも、そして異世界の人でも同じこと…。

 無料小説投稿サイト『小説家になろう』内で開催されているライトノベルコンテスト「なろうコン大賞」の受賞作『異世界居酒屋のぶ』。ある日異世界と繋がってしまった「居酒屋のぶ」が、日本料理で人々を魅了するグルメ系ファンタジーで、現在アニメ化企画も進行中の、人気急上昇中の作品だ。同作のコミック版『異世界居酒屋のぶ』(ヴァージニア二等兵:著、転:キャラクター原案、蝉川夏哉:原作/KADOKAWA)の最新3巻が2017年2月4日(土)に発売された(電子版も同日配信)。

 この「居酒屋のぶ」は、裏口は日本と、表は城壁に囲まれた古都・アイテーリアと繋がっている。中世のヨーロッパを思わせるようなこのアイテーリアは内陸部にあり、新鮮な食料が手に入りづらい国で、軍人たちはいつもじゃがいもばかり食べさせられ、貴族でさえも新鮮な食材は入手困難といった状態だった。

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「のぶ」は、日本人からすれば馴染み深い和風の居酒屋だが、そこにある全てが、アイテーリアの人々を感動させた。まず、店の佇まいからして違う。店のドアにはガラスが使用されているのだが、この国ではガラスは高級品で、こんな小さな居酒屋で使われているような代物ではない。そして、真冬でも温かい店内。それに、飲み物も違う。彼らは普段、「エール」を飲むことが多いようだが、この店ではまず「トリアエズナマ」を注文する。言わずもがなだが、ビールのことだ。彼らは、綺麗なグラスに注がれた、キンキンに冷えた「トリアエズナマ」を飲み、そのあまりの美味しさに驚く。また、「オトーシ」の枝豆や「オデン」、「アツカン」と次々に登場するメニューに、心身ともに癒されていく様子が描かれている。

 これらを飲み食いした衛兵、ニコラウスとハンスの他にも、次々と客が訪れては、内陸地の小さな居酒屋とは思えないクオリティに驚愕し、大将ののぶ、そしてこの店で働くしのぶに癒され、ここを居場所としていく。さらにその勢いは止まらず、貴族やギルドの権力者、助祭など、力を持つ者たちの間にも広まっていき――!?

「のぶ」の噂を聞きつけた数々の権力者たちの中には、この土地で手に入るはずのないものを要求したり、税金を巻き上げようと目論んだりと、挑戦的な態度で挑んでくる人たちもいる。だが、提供される料理の美味しさに、そしてその中にある「おもてなしの心」に心を動かされ、それがこのアイテーリアの在り方をも変えていく。しかし3巻では、「トリアエズナマ」がこの国において違法である「ラガー」だと突きつけられ、「のぶ」存続の危機に……!?

 コミカライズの魅力は、上で述べたような料理や世界観、物語もだが、なんといっても表情。冷えた「トリアエズナマ」を飲んだ時の、嬉しい刺激を感じている表情や、「アツカン」をちびちびと飲み、ほっこりしている幸せそうな表情を見ていると、思わず居酒屋に駆け込みたくなる。そしてしのぶのほわっとした笑顔は、読者まで和ませてくれる。

「居酒屋のぶ」は、今日もきっと日本のどこかで異国の人々を癒しているのだろう。そう考えるだけで、普段何気なく口にしているものが、いつものグラスが、キラキラと輝いて見える。

文=月乃雫