売れなかったらAVデビュー!? 衝撃の宣告をされたアイドルグループ……ラストで“ファンがとった行動”にみる本作の真髄とは?

マンガ

更新日:2017/3/13

 “売れないアイドルグループ。人気が出なかったら…アイドル全員、AVデビュー”。この衝撃的なコピーとともに発売されたのが、『バックステージ!』(オクショウ:原作、ニイマルユウ:作画/徳間書店)である。

 本作はアイドルグループ「マイルストーン」と、そのマネージャーを務める井上カスミが、アイドル戦国時代を生き抜いていく物語だ。しかし、彼女たちの活動は順風満帆とは言い難い。結成3年目にして、いまだ人気はゼロ。やがて所属事務所が倒産してしまい、解散寸前のところを新興芸能プロに拾われた。しかし、そこはAVメーカーを親会社に持つプロダクション。そして、横暴な社長からAVデビューを宣告されてしまうのである。

 AVデビューを迫られているアイドル、という設定のインパクトが強いが、本作の面白さはそこからどう巻き返していくのかが丁寧に描かれているところにある。カスミとともに彼女たちに力を貸すのは、「芸能界追放」という過去を持つ謎の敏腕プロデューサー・三間坂。もう二度と芸能界、そしてアイドルとは関わらない。そう決意していた三間坂は、カスミの熱意にほだされタッグを組み、少しずつではあるが着実にマイルストーンを成長させていく。

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 この三間坂が語るアイドル論は、非常に説得力がある。たとえば、必死に振り付けや歌を練習するマイルストーンに対し、彼は「まったくもって逆効果。それじゃ売れるワケがない」と吐き捨てる。それはなぜか。アイドルに求められているのは技術の高さではなく、「応援したくなるような一生懸命さ」だから、なのだ。もちろん、歌やダンスのうまさが評価されるアイドルもいる。しかし、「1年後に売れていなければAVデビュー」というリミットを定められているマイルストーンにとって、わずかな時間を基礎トレにあてるよりも、ひとりでも多くのファンを作ることに注力する方が有益なのは言うまでもないだろう。

 このリアルなアイドル論を生み出している原作者・オクショウ。実は彼、AKB48や乃木坂46が出演する番組の構成作家を務めている人物なのだ。現役の「アイドルのプロ」が描くのだから、非常にリアリティがあるのも納得だろう。

 こうしてリアルなアイドル論がちりばめられた本作は、2月20日(月)に第1巻が発売されたばかり。マイルストーンとカスミ、そして三間坂の闘いはこれからはじまるのである。

 ちなみに本作では、アイドルに夢中になる「ファンの心理」も丁寧に描かれている。それが如実に表れているのが、第1巻のラスト。マイルストーンを守るためにファンがとった行動には、思わず泣きそうになってしまった。自分たちが彼女たち(アイドル)を守るんだ。アイドルとファンとの関係というものは、想像以上に深いもの。そこも描く本作は、これまでのアイドル市場に対する見方を変えてくれる一冊かもしれない。アイドル好きはもちろん、それを毛嫌いしていたような人にこそ、ぜひ読んでもらいたい。

文=五十嵐 大