イケメン兄弟とひとつ屋根の下……なのに恋愛フラグが折られまくる! 「えげつないレベルでモテたい」女子高生の恋愛迷走コメディ

マンガ

更新日:2017/3/13

 テレビで活躍するタレントやモデルを見ては、ついついこぼれてしまうため息。あー、この人たちって、はじめっからチートレベルの容姿で生まれてるもん、人生イージーモードだよね。どうせ自分は、オシャレや髪型に気を使いまくって好印象を与える言動を心がけて、それでもやっとひとり釣れるか釣れないか。必死に努力しても、モテるかどうかギリギリのライン。でも、可能ならばモテる努力なんて一切せずに、モテまくりたい…。なんて煩悩まみれの欲望、誰だって心の奥底に隠し持っているはず。

 2月25日(土)に第1巻が発売された『恋愛フラグ0女子の迷走』(右野マコ/KADOKAWA)の主人公・姫妃(ひめき)も、「えげつないレベルでモテたい」という野望を持つモテに貪欲な人種だ。

 そもそも姫妃が置かれるのは、「それ、どんな乙女ゲー!?」的状況。親の都合で都会を離れ、泥団子村という辺鄙な土地へ引っ越すシーンから物語は幕を開ける。そこは都会から飛行機で3時間、そこから乗り継ぎで4時間、そしてさらに船で5時間もかかるという謎の土地。しかも村人のほとんどが男で、姫妃は男子校に通うにはめになってしまう。

advertisement

 けれど、この「村人のほとんどが男」というのがポイント。そう、俗に言う「入れ食い状態」を狙えるではないか。そんな男くさ~い場所に可憐な女子高生が舞い降りれば、次から次へと「恋愛フラグ」が立ちまくるはず。姫妃の邪な願いは、ついに叶うのだ。

 実際、姫妃の周辺にはいつ恋愛フラグが立ってもおかしくない男子ばかりが登場する。居候先にはイケメン兄弟がいるし、同じクラスにはメガネ男子のクラス委員長や肉食系ヤンキー、マネージャーを務めることになる野球部には熱血少年とクールなエースと、選り取りみどり。これ、まさに逆ハーレムだよね。

 しかし、なぜか姫妃は誰とも結ばれない。モテるための努力なんていらないくらい、チャンスに満ちあふれているはずなのに。若い女子、ただそれだけで男たちの注目を集めるはずなのに。乙女ゲー的展開よ、どこへいった!?

 実は、姫妃がモテないのには深い理由がある。それは泥団子村に「男同士でしか恋が成就しない」という呪いがかけられているから。そんな呪いのせいで、姫妃の恋愛フラグは折られてばかり。イケメン兄弟も、クラス委員長とヤンキーも、熱血少年とエースも、姫妃そっちのけで結ばれてしまうのだ。…って、なんじゃそりゃ! 目の前で若い男同士イチャイチャされる姫妃の屈辱たるや、相当なものである。

 そんなトンデモ設定に振り回されつつ奮闘する姫妃。本作の見どころは「モテたいのにモテない」姫妃の不遇っぷりにあるが、それと同時に、いや、それ以上に見逃せないのが彼女の表情だ。男たちの島へ移住できることを知った時の悪の権化のような顔や、イケメンをどのようにオトすか考えている時の卑劣な顔、そして毎度毎度「あて馬」にされてしまう時の呆気にとられた顔……。そのどれもがモテからは程遠いくらいの変顔。表情が豊かな人はモテるって聞くけど、さすがに姫妃はやりすぎ。豊かどころか、崩壊一歩寸前。さすがにそれじゃモテるわけがないでしょ。

 回を重ねるごとに「呪い」の影響力を理解し、それを上回るような恋愛フラグ計画を企てる姫妃。はたして彼女がラブコメのヒロインになれる日は来るのか。その迷走はまだ始まったばかりである。

文=五十嵐 大