プロレスは客も選手も頭がおかしくないとできない!?  今、注目のDDT選手は?【DDT高木社長×『プ女子日和』漫画家対談】後編

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更新日:2017/3/15

ユニットのわちゃわちゃ感が楽しい!

――男色ディーノ選手や飯伏幸太選手のお名前が挙がりましたが、今、注目の選手を教えてください。

早蕨 佐々木大輔選手率いる「DAMNATION」が、勢いがあって大好きです。去年くらいから個性を発揮してきて。今、プロレス界ではヒール(悪役)がはやっていると思うんですけど、ダムネーションもヒールユニット。でもみんな仲が良さそうで……わちゃわちゃしているんですよ。

高木 ははは! 全然ヒールじゃないという。

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早蕨 そこがDDTらしい。ヒールなのに、佐々木選手が何を言ってもかわいいというか許されるんですよね。本人がゆるい悪いみたいな方なので。

高木 やんちゃな悪ガキみたいな感じですよね。昔は本当に悪いことをして憎まれてっていうヒールのレスラーがいましたけど今はそういう感じではない。世の中的に、既成概念にはまらない悪い人たちがかっこいい! みたいな風潮があるのかなと。アウトローがかっこいい、みたいな。アメリカのWWEとかだと、ヒールがブーイングじゃなくて大歓声で迎えられている。

早蕨 今、ブーイングでもあたたかい感じがしますよね。「不満だぞ~」みたいな。

高木 僕はヒールじゃないのに、悪いことをやるとブーイング食らったりしますよ。経営者なので……体制側の人間は悪ですから。

早蕨 (笑)。でも最近の大社長はあまり大人げないことをしていないですよね。

高木 最近はね……若い人が出てきてるので。

早蕨 寂しいです。大社長に「大人げない」コールをするのが喜びなのに。

高木 ありがとうございます(笑)。

早蕨 ダムネーションの石川修司選手も、ここ数年でトップに立つようになってきた選手だとか。キャリアは長いんですよね?

高木 長いですよ。あいつは15年近くかな。195センチあるんですけど、でかい人って、いい人が多いんですよ。

早蕨 そうなんですか(笑)。

高木 どちらかというと小さい人に気が強い人が多い。石川はおおらかな感じですね。試合の最後を変に熱く締めようとするんですよ。ヒールなのに「みなさんのおかげでチャンピオンになれました!」とか言う。そうすると佐々木に「客に媚びてんじゃねえよ!」って蹴っ飛ばされるんですけど。

早蕨 そのへんのわちゃわちゃが楽しいんです。石川さんがマイクを取ったらもう、佐々木選手のキックが来るぞ!と待ってしまう。

高木 その「わちゃわちゃ感」っていうのが、ユニットだと出るんですよね。楽しそうに見える。

早蕨 ユニット内での関係性もあるし、ユニット同士の関係性もある。一人一人だと印象が薄いかなと思ってしまう人も、ユニットに入るとキャラが立ったりする。マンガでもよく言われることなんですけど、キャラって関係性なんだなと思いました。あと個人的に樋口和貞選手を推していて。

高木 樋口はいいですよね。ポテンシャルの高い奴でねえ。「DNA」っていう若手のユニットの選手。大相撲出身なんです。

早蕨 体幹がしっかりしていて、当たりも強いのが観ていて気持ちがいい。あと意外と頭がおかしいところがちょこちょこあって(笑)。私、人をポイって投げているのを見るとキュンとしちゃうんです。以前、梯子に登った高尾選手を、樋口選手が梯子ごとつかんで場外にポイッて放り投げたんですよ。それを見てなんて素敵なんだ! ってキュンとしました。

高木 あと、今一番わかりやすいのはアイドルユニットの「NωA」(エヌ・ダブリュー・エー)ですかね。DDTフェスっていう音楽とコラボしたイベントを始めたばかりの時に、なかなかアーティストの方の参加がなかったので、じゃあうちでアイドルユニットを作ればいいじゃん! っていう非常に計画性のないところからできたユニットなんですよ。

早蕨 (笑)

高木 彼らは試合前に、歌って踊る。歌とプロレスって相性がいいと思っていて。女子プロレスにはビューティ・ペア、クラッシュギャルズと、歌を歌う文化があった。彼女たちを応援するのは女性ファンだったんですよ。黄色い声援が飛んで。

早蕨 え、そうなんですか? 女子が女子に?

高木 そう。今は男性ファンが多いですが、昔の女子プロは女性が見るものだった。なので今こそ、男性アイドルユニットを立ち上げる時だなと。勝手に名前をつけて、活動は本人たちに一任しました。

早蕨 大社長は、「これだけ決めたから、あとはお前らやれ!」みたいなことが多いとお聞きしたんですが……。

高木 はい。丸投げですね。

早蕨 (笑)

高木 そういう部分で本人たちにもやる気とか自覚が生まれる、と。お客さんも、いきなり歌が入ったら驚くとは思うんですけど、その次の瞬間には闘っているので。

早蕨 大石真翔選手も技がすごくきれいで、完成度が高い。すごい技を見た!って喜びがあります。

高木 結構3人ともできる子たちなんで、バランスがいいし、DDTプロレスというものを知ってもらうために紹介するのに、いい3人ですね。僕はプロレスというのは、キャラクタービジネスだと思っていて。だから選手は個性が強くないと生き残っていけないんです。

――スーパー・ササダンゴ・マシン選手は、パワーポイントを使った試合前のプレゼンでも話題になりました。

早蕨 ササダンゴさんはテレビに結構出ていらっしゃいますよね。Eテレの「社会と情報」っていう番組でまじめに解説していて。その番組から入って試合を観にくることになった人って、どう思うんだろうと(笑)。

高木 彼はすごく才能があって。早稲田大学を……卒業はできなかったんですけど(笑)。

早蕨 男色先生は、大学を卒業したんでしたっけ?

高木 ディーノは、しましたね、6年間通って(笑)。僕も6年かかって駒澤大学の法学部政治学科っていう、まったくプロレスに関係ない学部を卒業しました。DDTって、異様に大卒が多いんですよ。みんなプロレスっていうものに出会わなかったら、そこそこの企業に就職していたと思うんですよ。プロレスで人生狂ったというか、自ら破滅の道へ……。

早蕨 (笑)

お客もレスラーも、頭がおかしくないとできない!?

――今まで見てきたDDTの試合で好きなもの、また、これから見たいものを教えてください。

早蕨 やっぱり先ほど言ったキャンプ場プロレスみたいな参加型のものが好きですね。自分も選手たちと一緒に走り回って観るのは楽しい。選手が隣を通り過ぎて「がんばってー!」って声をかけたり、写真を撮ったり。

高木 飯伏はお客さんに花火を向けたりしますからね。逃げ惑うお客さん……完全に参加型ですね(笑)。キャンプ場プロレスは、最初、平日の昼間、2時とか3時に開始時間を設定していたんですよね。こんな時間に誰が来るんだろう、と思っていたら、200人くらい集まった。

早蕨 もちろん行きました!

高木 頭がおかしいなあこの人たち、と(笑)。

早蕨 お客もレスラーも頭がおかしいって、おっしゃっていましたよね。確かに、って思いました(笑)。工場プロレスも好きですね。

高木 溶鉱炉で溶かした鉄を冷ますための石灰があるんですよ。それを使って一晩かけて、鉄を冷ます。だから、すっごい熱くなっていて。400度くらい。「くれぐれもこれは人にかけたりしないでください」って工場の人に言われたのに、選手たちは、完全に右から左に聞き流していて。

早蕨 (笑)

高木 試合が始まると、やっぱり絵的にシャベルでザクッと石灰をすくってわーっとかけたくなるじゃないですか。そしたら、めっちゃくちゃ熱かったんですよ! ギャーッてなりました。

早蕨 観ているほうはおもしろいだけですが、やっているほうは大変(笑)。路上プロレスは、またたくさん観たいですね。もちろん普通にリングでやる試合も楽しいですが。

高木 今年は狂った路上プロレスを結構いっぱいやると思います(笑)。大きい大会は、3月20日に、さいたまスーパーアリーナで20周年記念大会をやります。僕が担当している試合は、「信長の野望~俺たちの戦国~ 戦国武将マッチ」っていう、なかなか謎のタイトルがついてます(笑)。選手がそれぞれに戦国大名に扮して闘うんですよ。私が豊臣秀吉、飯伏幸太が織田信長、武藤敬司さんが武田信玄、全日本プロレスの秋山準さんが上杉謙信、大日本プロレスの関本大介さんが柴田勝家、うちの木高イサミが真田幸村。甲冑も作って、つけます!

早蕨 ……甲冑は、試合中は脱ぐんですよね?

高木 今のところ、つけてやるつもりです。

早蕨 飯伏選手、つけたままファイヤーバード・スプラッシュできるかな……。

高木 (笑)

「仕事をがんばっている女性たちに、プロレスはこれからもっと必要になってくる」【DDT高木社長×『プ女子日和』漫画家対談】前編

取材・文=門倉紫麻