ロンブー淳「娘にもたくさん選択肢をもてる環境を与えていきたい」 20~30代女性に伝えたいことは?【後編】

芸能

公開日:2017/3/7

 最近の日本はとにかく息苦しい。他人叩きや意見しないことを好む。ロンドンブーツ1号2号の田村淳は違った。何かに気づいたり疑問に思ったりしたら発言する。炎上を恐れずTwitterにつぶやく。現代日本に対する息苦しさやネット社会への疑問など、思うところをまとめた初の新書『日本人失格』(集英社)が発売された。

――さまざまな人の言葉を引用しているのが印象的でした。本を読んだり、講演会にいったり、とにかく人の言葉を聞いて、吸収しているんですね。

田村 たとえ自分と合わない人の話でも、聞いたほうがいいと思うんですよ。ときどき、立ち位置がちがうというだけで、どんなにいい意見でも受け入れられなくなっている人がいますけど、それってもったいないですよね。意見を決めるのは大事だけど、軸はニュートラルにしておいたほうがいい。嫌いな人の意見はすべて排除するなんてことをしていたら、きっとどこかで行き詰まっちゃうよ。この項目についてはわかる、でもこっちはわからない、こっちは反対、みたいに、一つ一つのテーマについて考えてほしい。この本を読んで、僕に同調なんてしなくていいから、自分はどうかを考えたり、一歩を踏み出すためのきっかけづくりになったりしてくれればいいなと思ってます。

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――田村さんがニュートラルさを持つようになった、何かきっかけはありますか?

田村 植松電機っていう、民間企業なのにロケット開発を続けていた北海道の会社があるんですけど、そこの社長さんと話したときに、「選択肢がたくさんある未来が、いちばん豊かなんだ」って感じたんですよ。夢はたくさん持ったほうがいいし、決められた何かにとらわれないほうがいいんだ、って。日本人ってどうしても、何か一つだけをめざして努力し続けた人の苦労・成功話が好きでしょう? それはそれですごいけど、そんなの達成できる人、めったにいないから。目標は途中で変わってもいいし、いろんな道を歩いていけばいいんですよ。そのためにもやっぱり、選択肢をたくさん持っていることが大事。だから僕は、自分の娘にもたくさん選択肢をもてる環境を与えていきたいです。

――いわゆる“古き良き”日本人の体質に疑問を持っている田村さんですが、「本当はここが魅力なのに」と思うことはありますか?

田村 もっと、まわりを尊重できる民族だったと思うんですけどね。村単位での束縛はあったかもしれないし、個性きわだつ人を受け入れるのも苦手だったんだろうけど、ともに生きるため協働するのは得意だったはず。「一人が失敗するとみんなが大変だから、一緒にがんばろうぜ」みたいな。でも今は、圧力ばかりが強くなって、つるみ方が下手になってきている気がする。

――「一人が失敗するとみんなが大変だから、お前失敗するんじゃねえよ」みたいな。

田村 というより、すでにバラバラなのにむりやりまとまろうとしているというか。個と集団のバランスがとれていないんですよ。コミュニティの在り方が変わってきたんだから、関わり方も変わっていかなきゃいけないのに、思想だけは昔のままで押しとおそうとするからゆがんでくる。でもそういう根本的な改善をしていくためには、やっぱり、若い人が声をあげていかなきゃいけないんじゃないかな。今はいろんなツールがあるんだから。ネットを、不安を解消するために人に怒り玉をぶつけるための手段にするんじゃなくて、不安に立ち向かうための武器にしたほうがいい。だってそのほうが、絶対に未来はよくなっていくじゃないですか。……って、僕が気づくくらいシンプルで簡単なことなのに、なんでみんな気づかないのかなあ?

――うすうすは気づいているけど、気づかないふりをしているのかもしれません。

田村 気づいたら日本人失格になっちゃうから(笑)。僕は問題が起きたらすぐに解決したくなるから、世間に対しても、「今動かないと、のちのちしんどいことになってくよ。それでもいいの?」って思うんだけど、誰も何も言わないんだよね。高齢化社会でそもそも若者の数が少ないのに、投票率も低いなんてさ。みんな、危機感を抱かないのかな。若者たちこそ、声を荒らげないといけないのに……でも、僕みたいに高齢者でも若者でもない40代の意見はなかなか届かないんですよね。

――ダ・ヴィンチニュースの読者は20~30代の女性も多いんですが、何か伝えたいことはありますか。

田村  これから子供を育てるときに、育てやすい国だと思いますか? って聞きたいです。もし育てにくい国だと思うなら、まずはそこを解決するために動かないと。子供も育てないし、この先受けられる保障が少なくなっても、生活レベルが落ちていっても、それでもなんにもかまわない、というなら別にいいんです。でもそうじゃないなら、ちゃんと声をあげなきゃ。だからといって、手当たり次第に怒り玉をぶつけまくって、好き勝手言えっていうんじゃないですよ。まとまるべきところはまとまらないと、世の中ぶっ壊れちゃう。それを率先してやっていくべきなのが、きっと、今の20~30代なんじゃないかな。

――常に先を見据えている田村さんですが、近い未来で、2020年までに何か目標はありますか?

田村 これから世の中は東京オリンピックに向けて盛りあがっていくだろうけど、僕はむしろ、それをやりきった後のことが不安。オリンピック後の自分は、どういう情報発信ができて、どういう影響力を持った人間になっているだろうかというのは考えていますね。メディアとしてのテレビの力はきっと弱まっているだろうから、自分がやりたいことや表現する場所は、テレビにとらわれずにどんどん挑戦していきたい。その一区切りとして、2020年を迎えられるようにしたいです。

取材・文=立花もも  写真=花村謙太朗

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