狂っているのはみんな? それとも私? 「サイコな人たち」を描く驚愕のホラー『外れたみんなの頭のネジ』2巻も狂気の展開!

マンガ

更新日:2020/9/9

『外れたみんなの頭のネジ』(洋介犬/泰文堂)

 「わずか30秒で震えあがる」とネット上で話題を集めている、ショートホラー作家・洋介犬さん。3月12日(日)、連載型新作マンガ配信サービス「GANMA!」にて発表している最新作『外れたみんなの頭のネジ』(洋介犬/泰文堂)の第2巻が発売された。

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 本作は女子中学生・ミサキを語り手に、ある日を境に狂ってしまった街とその謎を解き明かそうとするさまが描かれているサイコホラー。食人欲求が抑えられない女性、自殺実況に挑戦する男性……。ミサキの周りには、なぜかおかしくなってしまった人ばかりが集まる。しかし、みんな本当に狂ってしまったのか。「狂っているのはお前じゃないのか?」。ミサキは執事風の悪魔・べへりんにそう告げられ、真実を求めて躍起になるが――。

 第2巻では、謎のカギとなる「ミサキの失われた記憶」が物語の中心に据えられる。街がおかしくなってしまった理由を解明するには、どうやらミサキが記憶を取り戻す必要があるらしい。そこで彼女が試してみたのは、退行催眠。過去のあるときまでさかのぼることで、記憶回復を図ろうというのだ。しかし、催眠を受けるにあたって通されたのは、一切の光が遮断された真っ暗な部屋。やがて聞こえてくるのは、「ピチュ……ピチュ……」という何かを舐め回すような音。そしてミサキが見たものは……?

 これまで、幽霊や化物、不条理、実話などさまざまなジャンルのホラーを手掛けてきた洋介犬さんだが、本作で描いているのは「サイコな人たち」。第2巻ではそれに拍車がかかっており、毎回鳥肌が立つような展開が待ち受けている。

 個人的に最もゾワゾワきたのは、第27話、28話の「ヒトモドキ(前編・後編)」。ある日、学校の倉庫で出会った正体不明の男。彼は街の張り紙で捜索されていた、「人間のようなもの」に酷似している。というか、人間なのだが、どうやら家族から「お前は人間じゃない」と虐待されていたよう。彼をかくまうべきか、家族の元に連れて行くべきか迷うミサキ。すると、一緒にいたクラスメイトが「私が家に連れて帰るよ」と言い出す。ミサキは訝しみながらもその男の幸せを願うのだが、ラストでそれが見事覆される。クラスメイトが笑顔で言い放った言葉を読んだときは、思わず呆然としてしまったほど。人の心をえぐるような展開は、ぜひ実際に読んで確かめてみてほしい。

 狂っているのは街かミサキか。その謎を探りながら読み進めていくと、いつのまにかその狂気に取り込まれそうになるかも……! 深淵を覗き込むとき、深淵もまたこちら側を覗き込んでいるのだから。

文=五十嵐 大