日本人の5人に1人が該当する「HSP」って? 

暮らし

公開日:2017/8/30

『「敏感」にもほどがある』(高橋敦/きこ書房)

「他人の感情や体調に左右される」
「人に会ったあと、疲れてひとりになりたいと思う」
「いつの間にか空想にふけってしまう癖がある」
「刺激が多いとイライラすることがある」
「理由もなく気分が良かったり、悪かったりする」

 何か一つでも当てはまったでしょうか? 「全部そう!」という方は、もしかしたら≪HSP≫かもしれません。HSPとは、「超敏感体質」のこと。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、なんと日本人の5人に1人がその可能性のある生物学的な特性だそうです。

『「敏感」にもほどがある』(高橋敦/きこ書房)は、そんなHSPに苦しみ続けた著者が、「HSPあるある」を四コマ漫画と文章で面白く紹介し、その存在を知ることによって、ひとりで悩みを抱えている全国のHSPの「心の重荷を少しでも軽くできれば」と願いを込めた一冊。

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 HSPについて、もう少し詳しくご紹介しましょう。

 HSP(超敏感体質)は人に対する感受性が強く、他人の感情をあまりにも敏感に感じ取ってしまうため、他人の負の感情を、まるで「トイレの消臭剤になった」ように、どんどん吸い込んでしまう存在。ストレスから、肩こり、慢性疲労、虚弱など、原因不明の体調不良に悩まされている方も多いそうです。そのため、会社勤めや人に会うのがつらくなり、学校や会社ですり減った神経を回復するため、ひとりの時間が不可欠なのだそう。

 また、「感情」だけではなく、「言葉」にも敏感なのがHSPの特徴。

 例えばメールで「頭使ってね(^_^;)」という言葉に「なんかトゲがあるなぁ……」と過剰に気になり、その後も「相手がどうしてそう書いたか、あれこれ考え込んでしまう」そうだ。

「そのくらいは分かるよね。大人だから」や、「言葉通りの意味だけど?」といった相手のトゲを感じる話し言葉には、落ち込むことも。言葉そのものよりも、相手の顔色や声音、言葉の裏にある「感情的エネルギー」が気になってしまうそうです。反対に、自分の発言やメールにも気を遣います。「相手の気分を損ねないだろうか」と心配になってしまうのだとか。

 などなど、「他人は他人、自分は自分」と割り切ったり、「まぁ、気にしないでおこう」と気分を転換したりすることが苦手なようです。著者は幼い頃からこの感覚に悩み、そしてこの気質に振り回され、転職を繰り返し、社会に適応できない自分自身にへこむことも、しばしばあったとか。

 けれど、HSPは発達障害や病気ではなく、「体質」。平均的な人よりも「敏感な神経を持つ」個体で、人口の15~20%が該当するそうです。人間以外の生物にも、同じ割合で感受性の高い個体が存在するとか。

 なぜそんな「生きづらい体質をもった個体」が存在するのかというと、環境の変化や危険などにいち早く気づけるためだそうです。隠れた脅威にすぐさま反応し、集団全体が危険にさらされる前に、警鐘を鳴らせるよう「超敏感体質な個体」が一定数いるのです。その他、集団の摩擦を緩和させる「潤滑油」のような役割もあります。つまり、HSPには社会的な存在意義があるのです。

 体質のため、HSPを完全に「矯正」することはできません。けれど、自分がHSPだと自覚し、同じ悩みを持つ相手がいることを知り、「共感」することで「生きづらさ」を改善することはできます。また、本書には、なるべく「つらさ」を感じないようにするための、著者の考え出したテクニックも載っているので、「私、HSPかも……」という方は、ぜひとも参考にしてください。

文=雨野裾