次にくるマンガ1位・著者語る 「マンガ家になる前は会社勤め」
更新日:2012/3/6
地獄の補佐官・鬼灯のドSっぷりにハマる人が続出中! 「次にくるマンガランキング」第1位を、『鬼灯の冷徹』が獲得した。
著者の江口夏実さんにとって、本作がデビュー作。地獄の鬼たちのほのぼの(?)ライフをギャグタッチで描いた本作誕生の背景をうかがった。
「もし本当に地獄があるとしたら、そこにいる鬼にとっては地獄は“職場”なわけですよね。地獄というのは、結構きちんとした組織になっているそうなんです。普通の会社のようにトップがいて、それぞれに役割があり、上司の命を受けて働く部下=鬼たちがいる」
江口さんは、「地獄の住人たちも案外普通のサラリーマンなんじゃないか」と思ったという。
「組織である以上、運営上のルールもあるだろうし、働いている鬼たちの生活もあるわけですよね。そのあたりを描いたらおもしろいんじゃないかと思ったのが、この作品が生まれたきっかけでした」
閻魔大王の下、ポジションこそナンバー2だが、第一補佐官として地獄運営に辣腕を振るう主人公・鬼灯。性格は傲岸不遜で慇懃無礼。超がつくほどの合理主義者で、職務をスムーズに遂行するためなら冷酷無比な所業に出ることもしばしばだ。
「マンガ家になる前、普通に会社勤めをしていました。そのときに実感したのが、組織をうまく回すためにはナンバー2の能力が重要、ということでした」
逆にトップの閻魔大王は、いい加減なところもある。
「だけど、度量の大きい、いい人。あんな上司の下なら、働きやすいんじゃないでしょうか。みんな和気藹々とやっているし、有給休暇も取れるし、残業代も出るし、私の描く地獄は一種理想の職場なんですよ。世の中、もう少しこういうふうになってくれよ、という願いを込めて描いているようなところがあります」
ギャグマンガとはいえ、世の勤め人にとっては癒やしマンガにもなりうる世界観が、ネクストブレイクを予感させる一因なのかもしれない。
「舞台が地獄ですから、真面目な話にしようとすればできる。でも、もし地獄が実在していれば、きっと馬鹿馬鹿しい出来事や、笑っちゃう事件のほうが多いと思うんです。私たちの住んでいるこの世がそうであるように。私が描いていきたいのはそういう世界なんです」
(ダ・ヴィンチ3月号 次にくるマンガランキングより)