アニメ開始で話題の『ヨルムンガンド』、原作者が語るココの魅力

マンガ

公開日:2012/4/18

 武器商人というタブーを描いた人気ガンアクションコミック『ヨルムンガンド』(月刊サンデーGX)のアニメ放送がスタートした(TOKYO MX:毎週火曜24:30~ほか放映開始)。主人公はカリスマ性を持った若き女。少数精鋭部隊を率い、壮絶なガンアクションを展開し、やがて、世界を一変させる壮大な計画へ。物語を完結させたばかりの著者・高橋慶太郎さんにお話を伺った。

 「アニメ化が決まったときは、本当に嬉しかったです。実際に第1話を観た感想としては、絵に色と音が付いて密度がすごく上がっていて、こんな物語を僕が描いたっけ?と不思議な感覚になりました。自分の手から離れてしまったような感覚です。豪華なスタッフが頑張って作ってくれているので、絶対に衝撃的な、面白い作品になると思います」

 アニメ版は原作にほぼ忠実に作られている。原作の魅力は、ココ・ヘクマティアルという天才的に頭が切れる女性像と、迫真のガンアクション。そして、物語後半で語られる壮大な計画だ。この女武器商人というダークヒロイン像はどのように生み出されたのだろう。

 「元々、正義が主人公の作品より、悪漢が活躍する作品が好きです。武器商人を描くにあたって、男を主人公にすると、本当にただの悪い人になってしまいますよね。そこで華がある女性で考えました。そうすると、女の子ひとりで戦場を歩くわけにもいかないから、必然的に護衛が必要になってくる。そこにカリスマ性が備わり、海運王の父がいるという後ろ盾や武器を売る商才を持つという設定になりました。そうでなければ話が成立しないという必然から生み出されたんです」

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 ココの魅力は、歯に衣着せぬ大胆な発言。人類や世界の本質を突き、実に痛快だ。

 「実際に身近にいたら、かなり威圧感があってちょっと怖いですよね(笑)。でも、彼女のわがままが通ってしまう世界というのは描いていて面白い。非日常ですからね」

 本作の魅力はそれだけではない。この作品が本領を発揮するのは、ココの計画が語られる後半から。世界の不均衡を食い物にしていたはずの武器商人が、世界に均衡をもたらそうとする。冷たく非情に見えたココが、なぜ仲間を惹き付けていたかが明らかに。

 「その設定は当初から考えていたものです。せっかく物語を始めたのだから、誰も描いたことがないような結末を目指していました。新しい視点や考え方がなければ、描く意味がない。たとえSF的な荒唐無稽さであっても、毒がなければ描いていても面白くない。それが描けた今は、悔いなしです」

取材・文=大寺 明
(ダ・ヴィンチ5月号 ダ・ヴィンチ ピックアップより)