映画『テルマエ・ロマエ』、ローマプレミアで一番受けたシーンとは

更新日:2012/4/27

シリーズ累計500万部突破のヤマザキマリのヒット作『テルマエ・ロマエ』が4月28日より映画公開される。古代ローマ人、平たい顔族を両方日本人が演じるなどキャストも話題の本作。原作の世界観を忠実に再現し、なおかつオリジナル要素も盛り込んだ、見ごたえ十分の意欲作だ。ダ・ヴィンチ5月号では、監督の武内英樹さんに制作の裏側を取材した。

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 「役者さんを決めるにあたってまずしたのは、顔の“濃いリスト”と“平たいリスト”を作ることでした(笑)」  と、楽しそうに話す武内英樹監督。

「阿部さん、市村さんはもちろん、北村さんはローマ人の色男にぴったりだし、宍戸さんは……若干エジプト人寄りかな(笑)。一方の平たい人たちには動物的なかわいらしさがあって。同じ日本人なのに違う民族に見えますよね」  

武内監督が今回特に力を入れたのは、映画版オリジナルのストーリーづくり。
「映画では、流れのある独自の物語を紡ぐ必要があると思って、ローマ史実を盛り込んだ作品にしました。愛国心が強くて仕事に一途な、阿部さん演じるルシウスの人間的な魅力と、上戸さんの演じる真実(まみ)の魅力を前面に出して、歴史に興味のない人にも楽しく観てもらえるようにしています。

 僕は原作の大ファンなので、オリジナルの役を作ることには迷いもあったんですよ。でも、ならばいっそと思い切り弾けた役に設定したら、と。上戸さん自身も新しいことに挑戦したい気持ちがあったようで、すごく弾けた、いい演技をしてくれて。魅力的なキャラクターになりました。  

 音楽にも助けられましたね。原作の第1話を読んで『音楽は絶対オペラだ!』とピピッときた。民衆にパワーのあった古代ローマにぴったりだ、と。くだらないことをやってるのに高尚な音楽が流れてる、っていうのもおもしろいでしょう(笑)」

 取材の日、監督はプレミア上映があったローマから帰国したばかり。
「現地の方がゲラゲラ笑ってくれて! 『風呂のフタは湯の熱が冷めないためにあるものなのか?』とかルシウスと同じ目線で驚いてくれる。“ハドリアヌス帝の神格化”の話は日本人にとっての“織田信長”の話みたいな、イタリア人にとってはなじみ深いもののようで、笑えるけど感動したって言ってもらえました。

 でもローマで一番ウケたのは、ルシウスが温泉で子宝の御神体の前に立ちはだかるシーン(笑)。僕が原作の中で一番撮りたかったシーンで、『これなしではテルマエ・ロマエは成立しないんだ!』ってスタッフを押し切って撮ったので、ウケてほんとに嬉しかったです(笑)」

取材・文=門倉紫麻
(ダ・ヴィンチ5月号より)