いま、教養本が爆発的に売れている理由に迫る

社会

更新日:2012/5/25

 『世界史』上下巻48部、『銃・病原菌・鉄』上下巻26万部──。今、教養本が爆発的に売れている。

 この2冊のほか、昨年末文庫化されたマイケル・サンデルの大ベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』も絶好調。文庫ではないが、経済書『フリー』、新書大賞受賞作『宇宙は何でできているのか』のヒットも記憶に新しい。  

確かにこれまでにも、岩波文庫などに収められている古典的な教養本や『思考の整理学』のように脈々と読み継がれてきたロングセラーは存在した。しかし、ここまで爆発力を持つ教養本は、そう多くはなかった。ライトな入門書や雑学本ではなく、一段掘り下げた教養本や学術本(しかもけして安くはない!)がなぜここまで売れるのか。 ブームの背景には、混迷する社会情勢がある。  

 世の中が不安定になると、人は確かな拠りどころを欲するようになる。それが古からの知恵──教養だ。自分の立ち位置を見つめなおし、これからの時代を生きるにはどうすればいいか。そのヒントを歴史や哲学、物理学などの英知に求めるのだろう。そこに、わかりやすい解答はないかもしれない。しかし、書物から得た教養は、未来を生き抜く確かな武器となる。  

advertisement

なお教養本は、東京大学をはじめとする大学生協でヒットし、一般書店へとブームが波及するケースも少なくない。「今、東大で売れている本」を押さえておけば、日本の未来像が浮かび上がるかもしれない。

取材・文=野本由起
(ダ・ヴィンチ6月号 文庫ダ・ヴィンチより)