いま求められているビジネス書のキーワードとは

ビジネス

公開日:2012/6/23

 『ダ・ヴィンチ』7月号では、2012年上半期BOOK OF THE YEAR(※)をジャンル別に発表。ビジネス・自己啓発部門の1位に輝いたのは昨年11月の刊行直後から翻訳書としては異例の大ヒットとなった評伝『スティーブ・ジョブズ』。ヒットの理由を訳者・井口耕二はこう語る。

 
 「やっぱりジョブズという人間がすごく面白い。本書で初めて父としての素顔が明かされたのも大きいのかもしれません。一方で、評伝なんだけれどもビジネス書として読み解くこともできる。産業界全体に閉塞感が漂う今の時代に、唯一快進撃を続けてきたアップルをワンマン経営してきたカリスマの生き様は、ビジネスパーソンにとってもきっと参考になるのではないでしょうか」。ランキングは以下の通り。

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■1位『スティーブ・ジョブズ』(Ⅰ・Ⅱ)ウォルター・アイザックソン/著 井口耕二/訳
■2位『10年後に食える仕事 食えない仕事』渡邉正裕
■3位『采配』落合博満
■4位『自分のアタマで考えよう「知識」にだまされない「思攷」の技術』 ちきりん
■5位『ディズニーと三越で学んできた 日本人にしかできない「気づかい」の習慣
上田比呂志
■6位『サムスン式 仕事の流儀』ムン・ヒョンジン/著 吉原育子/訳
■7位『100円のコーラを1000円で売る方法』永井孝尚
■8位『この世で一番おもしろいミクロ経済学
ヨラム・バウマン/著 グレディ・クライン/画 山形浩生/訳
■9位『イノベーションのDNA』クレイトン・クリステンセン、ジェフリー・ダイアー、
ハル・グレガーセン/著 櫻井祐子/訳
■9位『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』ブライアン・ハリガン、デイヴィッド・ミーアマン・スコット/著 渡辺由佳里/訳
■次点『プロフェッショナルサラリーマン 「リストラ予備軍」から「最年少役員」に這い上がった男の仕事術』俣野成敏

ランキング全体を見渡すと今期は「個人のスキルを磨き、パフォーマンスの質を高めるために何をすべきか」というテーマを扱ったビジネス書のヒットが目立つ。つまり今の時代に求められているのは、ゆるい癒やし系啓発本ではなく、より具体的・建設的・実践的サバイバルの書だということ。これは希望の見えない未来に対する不安の裏返しともいえる。
 危機感を受け入れ、自己を改革し、スキルを磨いて前へと進む。そんなふうにシビアに今の現実を見据えたビジネス指南書は、今後もますます増え続けていくはずだ。

※全国の書店員にアンケートを実施。2011年10月1日~2012年4月6日に発売された書籍の中から、売れ行きもよく、内容的にも自信を持ってオススメできるという基準で、各ジャンルごとにベスト5をあげてもらった。のべ800店を超える書店から寄せられた回答をもとに集計。上位作品の中から各ジャンル別の委員会のメンバーが自らのベスト5を選出し、順位別に傾斜をつけて投票、書店員からの得票に合計してランキングを作成した。

文=阿部花恵
(『ダ・ヴィンチ』7月号「2012 BOOK OF THE YEAR ビジネス・実用書ランキング」より)