“イヤミス”の女王 湊かなえの『贖罪』文庫が大人気

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/26

湊かなえ『贖罪』(双葉社)の文庫が売れている。発売は6月6日だが、その後1ヵ月が経った現在も多くの書店で上位をキープ。品切れ店も続出している状態だ。

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この注目度の高さには、“イヤミス”ブームが理由のひとつに挙げられるだろう。“イヤミス”とは、「後味が悪い」「イヤな気分になる」ミステリー作品を指す言葉で、湊はイヤミス作家のひとり。映画にもなった『告白』(双葉社)は、まさしくイヤミスを代表する作品といえる。『贖罪』は、娘を殺害された母親と、犯人を目撃した少女たちをめぐる負の連鎖を描いた物語だが、湊作品のなかでもとくにイヤミス度が高いと評判だ。

イヤミスでブレイクした作家には、『ユリゴコロ』(双葉社)で2012年本屋大賞にノミネートされ注目が集まる沼田まほかるや、「女性の黒さを書かせたらピカイチ」との声も挙がる『殺人鬼フジコの衝動』(徳間書店)の真梨幸子などが挙げられる。このほかにも、すでに多くのファンを獲得している道尾秀介や米澤穂信にもイヤミス作品が多い。

イヤミスの魅力は、“人間の負の部分”を徹底して描き出している点だ。“いい人”が登場する心温まる物語やハッピーエンドを求める気持ちがあるように、誰もが目を背けたくなるような心の悪や暗さを見たいという欲望がある人も多いはず。グロテスクなカタルシスを体験してみたい! という人は、このブームを機に“イヤミス”を手にしてみてはどうだろう。

(ダ・ヴィンチ電子ナビより)