絶対に映像化されない東野圭吾作品 『天空の蜂』

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/26

 今クール、ドラマ化が相次いでいる東野圭吾の作品。そんななか、なぜか映像化されない作品がある――。
7月5日よりフジテレビの木曜10時枠でスタートした『東野圭吾ミステリーズ』は、これまで発表された短編集『犯人のいない殺人の夜』『怪しい人びと』『あの頃の誰か』の3作から、厳選された作品を1週ごとにドラマ化。週替わりの豪華キャストも話題になっている。また、TBS系で7月2日にスタートした多部未華子主演の『東野圭吾ミステリー 浪花少年探偵団』は、2000年のNHKドラマに続いて2度目の映像化。1988年に発表された『浪花少年探偵団』とその続編が原作となっている。さらに8月1日からはJ:COMオンデマンドとauの新サービス「ビデオパス」内で『東野圭吾ドラマシリーズ“笑”』が配信予定だ。

いずれも番組タイトルのアタマに著者名が入っていることからも窺えるように、東野作品といえば“映像のテッパンコンテンツ”。しかし、「ガリレオ」シリーズや『新参者』をはじめとする「加賀恭一郎」シリーズといった人気シリーズはもちろん、話題となった長編小説も多くが映像化済み。『東野圭吾ミステリーズ』のように、短編作品ですらオムニバスで連続ドラマ化される事態となっている。映像化され尽くして、もう作品が残ってないのではないか……。そんなふうにも考えてしまうが、じつは、まだ映像化されておらず、しかもファンからの人気も非常に高い作品が残っている。

それは、95年に発売された『天空の蜂』という長編作品。物語は、自動操縦の特殊ヘリコプターがテロリストに奪わることから始まる。爆弾を積んだヘリコプターが旋回する真下には、なんと稼働中の高速増殖炉が。国民全員を人質にするテロリストと、それを阻止するべく動く政府の駆け引きに、思わず手に汗握る作品である。映像にするなら、短い時間の出来事を描いた作品なので『24』のようなスリリングさも演出できるし、なによりダイナミックな映像や、魅力ある人物たちの群像劇も期待できるはずだ。

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執筆時には相当な取材を重ねたと思われる原発のディテールは、現在においては多くの人にとって他人事ではない、大きなリアリティがあるはず。福島第一原発の事故以降、メディア上でも原発問題が真剣に議論されるいまなら、この作品が映像化される日も近いかもしれない。

東野自身も「思い入れが強い」と語っていた、『天空の蜂』。いまだからこそ、ぜひ、映像化されることを祈らずにはいられない。