本のソムリエ・書店員が選ぶ“寝苦しい夜を癒してくれる本”

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/26

  毎日膨大な量の本に接し、本の知識なら誰にも負けない“本のソムリエ”としてとっても頼りになる書店員さん。そこで今回は書店員暦14年、なにわ書房本店リーブルなにわの店長をつとめる谷香織さんに、“寝苦しい夜を癒してくれる5冊”をセレクトしてもらった。

■『廏橋』 小池昌代 角川書店
数々の賞に輝く著者が描く、女という複雑な性。夢と現実があいまいになっていくような不思議な感覚に陥る物語。穏やかな生活の中でも、感じたり、恋したり、ゆらゆら揺れる心の襞が見え隠れする。

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■『振り子で言葉を探るように』 堀江敏幸 毎日新聞社
いつもこの人の文は美しい。「開かれた迷いの跡」「夢想の上下運動」「希望を宿した青い闇」。見出しひとつとっても素敵すぎる世界である。さらに、書評の中の本も皆読みたくなってしまうのである。

■『そうはいかない』 佐野洋子 小学館
誰もが知っている『100万回生きたねこ』の著者によるエッセイ。おもしろおかしいのになんだか切なくて哀しくて、でも勇気がでる。佐野洋子はやっぱりすごくて、読んでも読んでも泣けてくる。

■『歳月』 茨木のり子 花神社
詩人である著者が、最愛の夫への想いを綴った詩集。夫に先立たれてから31年もの長い歳月の間に書き留め、公表しなかったラブレターでもある。これほどの深い愛に驚き、憧れを抱かずにはいられない。

■『絵のある自伝』 安野光雅 文藝春秋
著者の水彩画は眺めているだけでいい。自然と笑顔になれる。タイトルどおりのこの本は、彼の生い立ちから現在までの道のりが、心の情景を映し出す優しいイラストと共に描かれている。

(ダ・ヴィンチ8月号「本屋さんの時間 本のソムリエ」より)