きつねが誘う和風ファンタジーの世界

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/26

 古来から日本の文化と密接に関わっているきつね。人を化かす飄々としたキャラクターかとおもいきや稲荷神の遣いとしての神聖な存在でもあり、どこか憎めない愛らしさがある。擬人化するとツンとすましたイケメンキャラにもなるし、もふもふのしっぽが特徴のかわいいキャラにもなる。もちろん狐の姿で出てきても、そのマスコット的なかわいらしさは変わらない。

そんなきつねが登場する和風ファンタジーが人気のようだ。

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7月2日に発売された『しくしくしくし』(るい・たまち 角川書店)では、新米のお天気神様・つくしが普段はお面の相棒・イナリと一緒に旅をする。同じく2日に発売された『いなり、こんこん、恋いろは。』(よしだもろへ 角川書店)は、遣いの狐を助けたことで宇迦之御魂神から変身能力をさずけられた中学生の伏見いなりが、片思いの相手との距離を縮めるために奮闘する物語だ。『妖狐×僕SS』(藤原ここあ スクウェア・エニックス)でも九尾の妖狐の先祖返り・御狐神双熾が登場するし、『夏目友人帳』(緑川ゆき 白泉社)でも子狐が出てくる。

どれも歴史を絡めたバトルものや堅苦しい内容ではなく、どちらかというとほのぼのとした物語を楽しめる作品。「狐につままれる」「狐の嫁入り」などの慣用句もあるように、日本では昔から日常のなかの不思議な出来事がきつねの仕業にたとえられてきた。日常と地続きの不思議な世界。そんな世界へ誘ってくれる存在が、きつねなのかもしれない。日常系和風ファンタジー好きにとって、きつねは目印になるのでは?

また、ダ・ヴィンチ8月号では『夏目友人帳』が特集されており、作者である緑川ゆきのインタビューや彼女が影響を受けた熊本の名所も取り上げられている。