「デモに行きたい!」人のブックガイド

社会

更新日:2012/7/25

 7月16日に最大規模となった、脱原発デモ。主催者発表では17万人、警察集計で7万5000人が参加したというこの集会は、普段、あまりデモの模様が報道されないニュース番組でも取り上げられ、大きな話題となった。また、官邸前で行われている脱原発デモに鳩山由紀夫元首相が参加したことでも賛否を呼んでいる。

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 わたしたちの生活とは切っても切り離せない問題をはらんだ、この運動。なかには「参加してみたいけど、はじめてだからどうしていいかわからない」という人も多いかもしれない。そんな人に入門書となりそうなのが、『デモいこ! 声をあげれば世界が変わる 街を歩けば社会が見える』(TwitNoNukes/河出書房新社)。この本では、デモ情報の手に入れ方からプラカードのつくり方など、初心者にやさしい情報が盛りだくさん。さらにデモを主催する方法やデモ体験記も掲載されている“実践に役立つ”1冊だ。

 一方、「どうしてデモが必要なのか?」と疑問を抱く人には、『怒れ! 憤れ!』(ステファン・エセル/日経BP社)を。これは、格差問題が引き金になり昨年起こったデモ運動“ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)”の引き金にもなったというパンフレットを翻訳したもの。90歳を超えた元レジスタンス活動家の著者が、ナチスへ抵抗してきた自身の経験などを踏まえ、「世の不正義に目をつぶるな。行動を起こせ!」というメッセージを送っている。この、世界に衝撃を与えた“ウォール街を占拠せよ”運動についてもっと詳しく知りたい向きは、『私たちは“99%”だ――ドキュメント ウォール街を占拠せよ』(『オキュパイ!ガゼット』編集部、湯浅 誠/岩波書店)を手に取られたし。

 また、日本の若者たちによる運動の現在を知りたい人には、『活動家一丁あがり! ―社会にモノ言うはじめの一歩』(湯浅 誠、一丁あがり実行委員会/NHK出版)と『「生きる」ために反撃するぞ! ―労働&生存で困った時のバイブル』(雨宮処凛/筑摩書房)がおすすめ。生きづらい世の中を変えるための方法、そしてデモの必要性について、きっと答えが見えてくるはずだ。

 ネット上ではデモへ関心が集まる反面、“嫌デモ派”の意見も目立つ。たしかに過去のデモは、団体旗がはためき組織的な動員に支えられている印象も強く、近寄りがたい雰囲気があった。しかし近年では、DJが音を鳴らしたり、踊りながら行進を行う“サウンドデモ”の登場など、そのかたちや主張内容は多様化をみせている。そもそもデモは、憲法上もその権利が保障された、自分を表現する方法のひとつ。アメリカの思想家・ソローは『市民の反抗―他五篇』(H.D.ソロー/岩波書店)のなかで、民主主義の正しい姿として、国の不正に対して市民が行動することの大切さを説いたが、その意味でデモはわたしたちの日常と密接に関係した活動だ。一過性のブームとして捉えるのではなく、いまこそ、デモに関する議論を活発に行うことが重要なのかもしれない。