“何やってるかよくわからない部活”が大人気

更新日:2012/7/26

 最近のラノベやマンガでやたらと目につく、“何やってるかよくわからない部活”。「隣人部」に「奉仕部」、「第二ボランティア部」「軽小説部」「文化研究部」「ごらく部」「GJ部」「帰宅しない部」なんて部活まで登場してきた。実際にはありえないこれらの部活だが、「隣人部」は友達を作ること、「軽小説部」はラノベを読んだり、ラノベについて語ること、「奉仕部」は生徒の問題解決を手助けすることといった立派な(?)活動目的がある。しかしそれはあくまで名目で、実態はみんなでギャルゲーをやったりプールに行ったり、美少女にボコボコにされたりといったもの。明確な目標があるわけではなく、先輩後輩の上下関係もなく、ただ友だちと好きなことやってしゃべっていられる場所があるのはうらやましい! そんなみんなの願望がつまったのが“何をやっているかわからない部活”なのだ。

 それにしても、謎の部活、なぜここまで増殖しているのか? これらの部活が登場する作品は、いずれも“日常系”と呼ばれるものばかり。学校に行って美少女とたわいもない会話をして……というほのぼのとした日常を描く“日常系”が、いまラノベやアニメの世界を席巻している。その誕生とブームのきっかけになったといわれるのが、『涼宮ハルヒの憂鬱』(谷川 流、いとうのいぢ/角川書店)と『けいおん!』(かきふらい/芳文社)。“宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶこと”を目的として作られた「SOS団」や、実際は部活の様子などほとんど描かれず、部室でお菓子を食べてしゃべっているだけの「軽音部」。そう、実はどちらも“何やってるかよくわからない部活”ものでもあったのだ! 他にもさまざまな日常系作品があるが、“何やってるかわからない部活”や生徒会が出てくるものは少なくない。

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 口うるさい親がいる家でも、イヤな奴のいるクラスでもない、日常の場所、それが部活。でも、ふつうの部活のように、甲子園やコンクールなど明確な目標に向かって努力なんてし始めたら、それはもう“日常”でなくなってしまう。つまり“何やってるかわからない部活”は日常系のために作られた舞台で、この2つは切っても切れない関係なのだ。

 ちなみに、その元祖とも言えるのが2001年に刊行された『氷菓』(米澤穂信/角川書店)の「古典部」だろう。古典部というから古典について研究したりしているのかと思いきや、決まった活動は文化祭で文集を作ることだけで、基本的には「部の目的は定かではない」。当時はまだ“日常系”というくくりもなく、ミステリーでもあるが扱っているのは、あくまで“日常の謎”。

 そんな「古典部」が登場する新作『鏡には映らない』が7月12日に発売された『小説 野性時代』(角川書店)8月号に掲載されている。あなたの学校にも、ひとつくらいそんな“何やってるかわからない部活”があるかも……?