もしこの世界に“下ネタ”がなかったら……?

社会

更新日:2012/7/31

 下ネタなんて幼稚で下品なものだし、嫌いな人もけっこういる。じゃあ、もし失くなったとしても、誰も困らない!?
第6回小学館ライトノベル大賞で優秀賞を受賞した『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』(赤城大空、霜月えいと/小学館)では、「公序良俗健全育成法」が制定され、下ネタや卑猥なものが完全に排除された日本が描かれている。政府の下ネタ排除はとことん徹底していて、家畜の育成エリアへの立ち入りも制限され、ほとんどのペットが去勢されている。卑猥なイラストやらくがきでもしようものなら、未成年でも関係なく執行猶予なしの長期刑に処される。なんなら殺人より悪いことをしたぐらいの扱いなのだ。

 そんな中で育った高校生でも、やはり卑猥なことには興味がある。しかし全く知識のない彼らの間で語られるのは、ブラジャーを身に付ければ胸が生えてくるとか女性用下着を着けていればあそこが抜け落ちるとか根拠のないものばかり。そもそもこれって下ネタなの? というレベル。

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 高校生になってもこんなことを言っているとは、いろんな意味で心配になってくる。

 そんな彼らに正しい知識を教えるため、「雪原の青」というペロリスト(下ネタテロリスト)となった華城綾女(かじょうあやめ)は、覆面のようにパンツを被って卑猥な言葉を叫びまわったりエロ本のコピーをばらまいたりしていた。彼女に弱みを握られてしまった主人公の奥間狸吉(おくまたぬきち)も、下ネタテロ組織「SOX」のメンバーとなって一緒にテロ行為を繰り返すことになる。

 彼らは、何も知らない子供たちに貞操帯をつけさせようとする大人を振り切って、生徒に正しい性知識を与えることができるのか!?
恋心と情欲の区別がつかなくなって相手を襲っても、それが悪いことだと思えない。痴漢や女性用下着を頭に被ったテロ組織に対して、卑猥とも思わない“純粋”な子供たちが育ってしまったら……?

 下ネタがない世界は、退屈というよりちょっぴり恐ろしい世界なのかも。ばかばかしい仮想未来のようだけど、たとえば東京都青少年の健全な育成に関する条例がどんどん厳しくなったりしたら、もしかすると……。そんな未来が来るぐらいなら、あってもなくても困らないような下ネタだけど、やっぱり必要! なのだ。