週刊少年ジャンプにラブコメ増殖 非リア充化進行中!?

マンガ

更新日:2012/8/13

 「友情・努力・勝利」といえば、言わずと知れた『週刊少年ジャンプ』(集英社)の三大原則。しかし、その三大原則に新たな要素が加えられようとしている。それは「ラブ」。そう、ジャンプで今、ラブコメ熱が沸騰中なのだ。

advertisement

 そもそも、『I”s<アイズ>』(桂 正和)や『いちご100%』(河下水希)など過去の人気作を見てわかるように、これまでもジャンプには「ラブコメ枠」というべきものが存在してきた。それは、いつの時代も少年たちの心を甘酸っぱく刺激。「初恋は桂正和が描く女の子だった」という人も多いはず。しかし、そのラブコメ枠が、現在はなんと3作品に“拡大”しているのだ。

 そのひとつは、『ニセコイ』(古味直志)。主人公・楽は、昔出会った少女と結婚の約束を交わしたものの、時が経ち、その少女の顔を忘れてしまう。そんななか、親から、ツンデレ美少女の千棘と「3年間、恋人同士になってもらう」と言いつけられ、2人の奇妙な関係“ニセコイ”が始まる……というストーリーだ。一見、「親からの強制的な婚約モノ」という定番話にも見えるが、楽が少女との約束の品である錠と合いそうな鍵を各ヒロインが持っており、誰の鍵が本物なのか? という謎解きの要素も。そして何よりも「登場する女の子たちがかわいすぎる!」と評判だ。

 ふたつ目は『恋染紅葉』(坂本次郎、ミウラタダヒロ)。物語は、赤面症である主人公・翔太が一目惚れした美少女・紗奈は、なんと芸能人だった! というもの。特筆すべきはその画力で、スリムからムッチリまで、女の子の身体をキレイに美しく描き分ける力はすばらしいのひと言。もちろん、時折入るエロ要素も満点だ。

 最後は、『パジャマな彼女。』(濱田浩輔)。こちらは、主人公・目覚計佑(名前もラブコメちっくで◎)の幼馴染みである・音巻まくらが、ある日突然眠ったまま起きなくなり、なぜか主人公だけに見えるパジャマ姿のお化けとなって現れるというストーリー。ファンタジー×ラブコメという最強の設定に加え、作中に入るエロ描写も魅力的。その勢いは、あの『To LOVEる―とらぶる―』(矢吹健太朗、長谷見沙貴)に勝るとも劣らないといっても過言ではなく、ウブな少年なら鼻血確定の展開が毎号待ち受けている。

 こうしてジャンプが“ラブコメ度”を増した結果、新規読者も増えているようだ。「『ニセコイ』目当てで毎週買うようになった」という19歳の男子大学生は、「非リア充にもとっつきやすくなった」とその感想を漏らす。

 キムタクにAKB48メンバー、そのほかおじさんからギャル、子どもまでから幅広く愛される『ONE PIECE』(尾田栄一郎)の印象が強いせいか、“ジャンプ=リア充の読み物”という見方をする人も少なからず存在する。しかし、ラブコメ枠拡大によって“非リア充”にも安心できる雑誌になったらしいのだ。たしかに、非リア充の愛読書として挙げられるライトノベルの人気タイトルは、その多くがラブコメ作品。「友情・努力・勝利」とは距離を置く非リア充にとっても、ラブコメは“親しみ深い世界”といえるだろう。

 非リア充とリア充という、相容れない者が共存してしまう強靭な包容力。もしかするとこれは、新たな“ジャンプ黄金期”のはじまり……なのかもしれない。