人気急上昇中! いま最も注目のダンスマンガ

マンガ

更新日:2012/8/17

 社交ダンスに魅せられた男子中学生・多々良を主人公にしたコミック『ボールルームへようこそ』(竹内 友/講談社)が、人気急上昇中だ。『月刊少年マガジン』(講談社)での連載も大好評で、5月に発売された1巻は即重版という勢い。作者の竹内友さんは、なんとこれが初めての連載。驚異の俊英なのだ。

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 社交ダンスというと優雅なイメージを持つ読者が多いと思うが、じつは〝ダンススポーツ〞とも言われ、高い技術を競い合う激しい世界でもある。

 大学時代は「競技ダンス」部に所属していた竹内さん。彼女にとって、それはとても大切な経験だった。
「社交ダンスは、いつか絶対描きたいと思っていたテーマです。でも、それはもっと先のこと。キャリアを重ねて、しっかりした技量が身に付いたら挑戦しようと思っていました」

 しかし、竹内さんが熱い情熱を傾けられる作品を、という編集者の勧めで連載に踏み切った。「今でも自分に社交ダンスを描く資格があるのかどうか、暗中模索しながら格闘しています」と言う。真摯で真剣。彼女の執筆姿勢は、主人公・多々良の魅力にしっかり表れている。

 多々良は天才ではない。「夢も才能も、自分には何一つない」と思い込んでしまっている気弱な少年だ。社交ダンスと出会い、少しずつ自分を変えていく彼の懸命な姿には、誰しも共感し、また励まされる。
「社交ダンスは、多々良がようやく見つけた本当にやりたいこと。ダンスだけが彼の居場所なんですね。多々良の才能は、“ダンスへの愛”だと思います。何かに対して身を捧げ情熱を燃やし続ける、ということは自分の身を削ることです。並の精神力では持続しない。“愛”を生涯持ち続けられる人、それが選ばれた人なのかなと思います。多々良は、ダンスに対してすごく誠実。きっとその愛情や情熱を、これからも手放すことはないと思います」

 物語の中では社交ダンス自体の面白さも、もちろん輝いている。ダンスシーンは力強さと美しさを兼ね備え、ダンサーの表情も大迫力。社交ダンスの知識がゼロでも心揺さぶられる。一方、経験者やダンサーの間ではそのリアルな描写が話題だ。玄人にも支持される、非常に完成度の高い作品なのだ。
「試合をたくさん観に行ったりして、取材を重ねました。社交ダンス業界の方たちにずいぶん協力していただいて。アマチュアNo.1選手の石原正幸さんは、作品のためにわざわざクイックステップの振り付けを考えてくださったんです! もう感動しました。今後そのステップも登場しますので、ぜひお楽しみに。
 多々良の成長を描きながら、これからも社交ダンスの魅力をお伝えしたいなと思います。そして、ダンサーや経験者の方たちにも恥ずかしくない内容にしたい。マンガが現実を表現できている、できれば現実を上回る、そんな作品を描いていきたいです」

 インタビュー掲載のダ・ヴィンチ9月号では、同作のほか、注目すべき作品を多数掲載している。

取材・文=松井美緒 
ダ・ヴィンチ9月号「コミック ダ・ヴィンチ ダンスマンガ特集」より)